智潤♀のお話です。昨日更新したつもりだった夫婦の日だよ!予約の日付間違えてた(笑)

名前のないモブ視点でっす!

 

 

 

 

 

LOVE BIRDS

 

 

 


 

青い空

 

白い雲

 

人っ子ひとりいないビーチ

 

 

夏場はそれなりに混みあう綺麗なビーチは

季節外れの今とても閑散としてる

 

でもその分落ち着く波音がよく聞こえるからいいんだ

 

テラスへと続くドアを開けてそよそよの潮風を全身で受ける

 

 

ん~っ

最高!

 

 

一番に掃き掃除はしたし

 

コーヒーも紅茶もケーキもちゃんと仕込んである

 

 

「よしっ!」て気合を入れて

カウベルを鳴らしながら出たドアの札を「open」にひっくり返した

 

 

私は小さなカフェを営んでいる

 

バリバリのキャリアウーマンだった現役時代に

たっぷりと貯めたお金で一念発起して

 

静かな場所でゆっくり過ごしたい!って

喧騒にうんざりしてた都会を離れて海辺の小さな街に来た

 

 

最初の頃はひと月に十組も来てくれればいい方って感じだったんだけど

 

ショコラティエだったお母さんや

デザイナーの友達のアドバイスのおかげで

 

SNSや口コミで色々広がってってくれてるみたい

 

遠いところからわざわざ来てくれる人もいるんだ

 

 

今日はどんなお客さんとお話出来るのかとっても楽しみ

 

 

 

カランカランカラン・・

 

 

 

お、早速

 

 

 

「いらっしゃいませ!」

 

「こんにちは」

 

 

 

これはまた可愛らしい子たちが来た

 

大学生くらいかな?

高校生かも

 

ちょっと長めで明るい茶髪、チャラそうな感じがしないのはアンニュイな表情のせいもありそう

スラッとしてて綺麗な男の子(・・男の子だよね?)と

 

顔は濃い目っていうか派手な印象だけどボアジャケットとスリムシルエットのパンツが超似合う

お人形さんみたいなクール系美少女(てか顔ちっさ!)のカップル

 

これは学校内でもかなり注目の的に違いない

 

 

というか見た目が好みドンピシャなんだけど!

あ~っず~っと見てた~いっ

 

 

じゃなかった

 

 

 

「お好きなお席へどうぞ」

 

 

 

仕事!しろ!

 

ニヤつきそうになる顔をどうにか収めて

ガラガラの店内を手のひらでさして促してグラスに水を注ぐ

 

その間

 

 

 

「どうしよっか」

 

「海見たいよね」

 

「じゃあ外?寒くね?」

 

「平気じゃない?」

 

 

 

なんて会話してるのも筒抜け

 

ふたりとも声まで可愛いのかよありがとうございます

 

手元狂ってさっきから氷逃がしまくってるけど些細なことだ

 

 

 

「あの」

 

「っはい!」

 

 

 

やっべ仕事仕事

 

床に転がった氷を不可抗力でバキッと踏みつぶしつつ振り返る

 

 

 

「テラスの方って出ても大丈夫ですか?」

 

「大丈夫ですよ。好きにお使いください」

 

「だって」

 

「じゃあ行こ」

 

「ん」

 

 

 

あ~ウッソその距離も手繋いで歩くの?

最初から繋ぎっぱだったにしてもお店に入る時点で解かない?

 

尊いな?てぇてぇな?

 

はー

今日で私は天に召されるんかな?

 

それでもいい

 

 

 

「あ、思ってたより寒くない」

 

「海も綺麗に見えんな」

 

「うん」

 

 

 

そうだろうそうだろう

 

何せ”海が見える”その立地に惚れて買った土地だからね!

 

お目が高い~

 

 

水を零さないように気を付けながら近づくと

 

見やすいように海側へ向けて置いてる椅子を

男の子が向かい合わせに動かした

 

 

???

 

 

君はいいのか、海

 

 

 

「ここ座ってちゃんと見える?海」

 

「私は見えるけど・・智からは見えないよね」

 

「ん?見える。大丈夫」

 

「え、どこが?」

 

「潤の目にうつるからずっと潤見てれば大丈夫」

 

「っぁ/////・・ぅ/////・・ばっかじゃないのっ//////」

 

 

 

ごちそうさまです

 

顔どころか首まで真っ赤な彼女さん可愛すぎる

てか彼氏全然照れないな

 

 

 

「もう!どれにするの!」

 

「迷うよな~、チョコは外せないんだけど」

 

「うん、鉄板だよね」

 

 

 

彼女さんが広げたメニューをふたりで頭を寄せ合って覗き込んでる

 

そんな風にしなくても見えるでしょうよって思うけど

興味津々な彼女さんの仕草に彼氏クンが寄せに行ってるのが丸わかり・・

 

この子彼女さんのことスゴく好きなのねぇ

 

 

 

「このドームってか卵型?雪の結晶とかいっぱいついてて可愛い~」

 

「ん?」

 

「これ!割ったら中から生チョコ出てくるみたい」

 

「へぇ、なんか面白そう」

 

「私これにしよっかな~、でもチョコのミルフィーユも捨てがたい・・智は?」

 

「おれはこれかな」

 

「チョコクリームチーズのタルト!美味しそう~っ」

 

「半分やるよ」

 

「うっ、食べたいけど・・ダイエット・・」

 

「後でジム行けばいいじゃん」

 

「嘘でしょ・・?食べたその足で・・?死ぬよ?」

 

「ははは!」

 

 

 

どうしよう

すっごい楽しそう・・

 

水が置けない

 

この可愛い空気に入っていける気が全然しない

 

ていうか壊したくない

 

もう永遠に悩んで可愛く会話しててほしい

 

 

 

「あっ店員さん、注文いいですか?」

 

「はーい」

 

 

 

そう上手くはいかないか

 

 

 

「えっ私まだ」

 

「この丸いヤツとタルトで。あとコーヒーをふたつ」

 

「かしこまりました」

 

 

 

おいおい

いいのか勝手に決めちゃって?

 

 

 

「あとミルフィーユをひとつテイクアウトで」

 

「えっ」

 

「かしこまりました」

 

 

 

ほほう?

なるほど・・?

 

とりあえずペコリと頭を下げてなるべくゆっくり厨房までを歩く

 

 

 

「なんでテイクアウト?」

 

「ジム頑張ったご褒美は必要だろ?」


「行くの確定なんだ」


「そういうデートいや?」

 

「智が一緒ならどこだっていいけど、行った意味はなくなるよね」

 

「ミルフィーユ分まで動けば大丈夫だろ」

 

「ええ?そういうもん?」

 

「ベッドで運動の方がいい?」

 

「デリカシー!」

 

「イテッ!」

 

 

 

ああ、あるよねぇその年頃の男の子って

 

ふたりとも芸能人みたいな見た目してるけど中身はどこにでもいる普通のカップルなんだなぁ

 

可愛いなぁ

 

 

何やら彼女さんからのお小言が始まった様子を微笑ましく思いながら

 

やっとたどり着いた厨房で可愛い彼らのためのケーキを用意するために「よしっ!」と小さく気合を入れた

 

 

 

(つづく)