智潤のお話です。
オメガバース下地に独自設定はいってまーす!
RED THREAD SYNDROME
ヒートを起こしてしまったあの日
まだわずかに熱の燻るなか目が覚めた俺の目に真っ先に映ったのが大野さんだった
透明な水みたいな気配の人
なんでか心が落ち着いてひんやりと涼しい
小さく微笑まれるとなんだか安心して
知らない人と一緒にいるのに焦るって意識が全然起きなかった
そんな俺の視界に顔いっぱいに入って来たのが相葉くん
「だいじょーぶ?つらくない?おおちゃん容赦ねぇから~」
「ちゃんと労わってたって」
「うっそだぁ~!」
なんかキラキラした笑顔の眩しい人だった
何を聞かれてるのか分からなくて横たえられてた体を起き上がらせる
そこで初めてここが知らない人の家なんだって知った
「えっ!あれっ!?」
「あはは!やっと追いついた感じ?おっはよ~!」
「声がデカいアイバカ!」
「って!」
最後に現れたのがニノ
マメシバみたいな可愛い顔をして相葉くんを容赦なく殴ってたっけ
困惑する俺に「コイツの声で頭キンキンしません?大丈夫です?」なんて言いながら
ほかほかの湯気を立たせたマグカップを手にやってきて俺の隣に座ってきてた
「はい」って差し出してくるから反射的に受け取って・・・なにこれ?って思う
緑茶っぽいのになんか甘い匂いがする
「うす茶糖っていう静岡の甘いお茶ですよ。鮫島さん・・知り合いに頂いて」
「へぇ・・・?」
・・あ、ほんとだ甘い
ていうか甘すぎ・・?
「疲れた時には甘いものでしょうから」
「どうも・・」
あったかいお茶のデザートみたいな甘さが体の芯にじんわり広がる
ほぅ・・っと息を吐いて
それから
改めてどうして自分がここにいるのか
大野さんに信号無視を止められた後の話を聞いたんだ
彼らの性別と一緒に
「・・つまりここはオメガ専用のシェアハウスで、ヒートの抑制剤を作る原料になるヒート中のオメガの母乳や精液を採取して提供している製薬会社の下請けも兼ねている・・てこと?」
「そう。うっかり職業病でお前のも採っちゃったけど、本来同意のない原料の採取はアウトだからこれはマジごめん。ちゃんと廃棄すっから」
「あ、はぁ・・いえ・・・」
全然ついていけない
城島先生からシェアハウスについては聞いてたけど詳しくは知らなかった
抑制剤の作り方だって・・何で出来ているかも知らなかった
てか他のやつの精液とか母乳で出来たの飲むって・・キツくねぇ・・?
「あ、結構潔癖?」
「そういうことじゃないでしょうよ」
「いや、まぁ・・ちょっと・・」
「大丈夫だよせーぶんぶんり?とかにかけたり色々してちゃんとキレイになってるから」
「はぁ・・」
そういうもんでもないと思う
これから抑制剤を飲むのに勇気いりそう
聞かなきゃよかった・・そう思ったら
「この薬はね、オメガが誰かの役に立てる証なんだ」
「え?」
思いもしない相葉くんの言葉に顔を上げる
「ちょっと恥ずかしいけど・・でもこれで毎日誰かが助かってる。もしかしたら自分も救ってるかもしんない」
「それならまぁ多少の犠牲もやむなしって感じですかね。ヒートの間は意識トぶからわからないっちゃわからないですし」
「オメガだけなんだよ。同じように苦しんでる人を助けられんのは」
「オメガにしか、出来ない・・?」
誰かを助ける
そんな事ができるの?
誰にも敵わない劣等種って蔑まれるだけの俺たちに
呆然としながら相葉ちゃん、ニノ、大野さんと順番に見る
最後の大野さんが
安心させるようにニコッと笑ってくれて
なんだか胸の奥がキュッとした
「相葉ちゃんは役に立ててる証っつってたけど、これはこいつらの居場所の証でもあると思ってる。生まれてきた意味はある。ここに居ていいんだって少しでも思ってくれたらおれも嬉しい」
ここに居ていい・・
ベータなのにそんな事思ってくれる人がいる
少なくとも、大野さんはそう思いながら相葉くんやニノといる
汚いって蔑まれて当然の存在なんかじゃない
意味がない、価値がないって言われるだけの存在じゃない
誰かの役に立てる
ずっと否定してきた自分を
否定されてきた自分を
ここではそのまま受け入れてくれる
だから俺はこのシェアハウスに移り住む事にしたんだ
(つづく)