智潤のお話です。
女体化&義兄妹が苦手な方は回れ右!
UNDER THE ROSE
どれにしよう、と手に持ったスカートを見比べながら悩み始めて十分
隣でトップスを吟味してた相葉さんが「おれは松潤にはこっちが似合うと思うけどな~」なんて言いながらタイトめなジーンズ生地のロングスカートを指し示す
中学で同じ部活になったのを切っ掛けに仲良くなった一個上の相葉さんは爽やかイケメンなワンコ系で、人懐っこくて気さくな性格から男女共に人気が高い。友達も多い
キツめの印象を与えやすい私の外見にものともせず「おれ相葉雅紀!相葉ちゃんって呼んで!」なんてニコニコ顔で話しかけてくれた猛者だ
人見知りとキツい物言い、太い眉とツリ目で孤立しそうになってた私は彼が緩衝材になってくれたお陰で友達が増えた
そうじゃなかったら私の友達は未だにニノひとりだったと思う
そんな彼はとてもお洒落でファッションセンスもいい
私も着るものにはとても気を使っているから、そこら辺でも気が合うんだと思う。休日にこうして一緒にショッピングに来るくらいには
ちなみに今日は違うけどいつもはニノも一緒だ
「ロングか~」
「松潤ミニが多いからたまには大人っぽい自分を見せるのもいいかもよ?」
「う~ん」
大人っぽい自分
そう聞いてふっと頭に浮かんだのは三歳年上の兄、智の事
雨の日に智に触れてから寝起きが悪い私を朝起こしてくれるのがお父さんから智に変わった
朝食を作るだけじゃなくて買い出しもしていた智が放課後、時々私を連れて買い食いしながら帰ることも少しずつ増えていって
話す事が増えた事で必然的に距離も縮まっていってたと思う
それが智が高校二年生になった夏、突然髪を金髪に染めて帰ってきてからあんまり話さなくなっちゃった。黒髪の方がいいって言ってもなおらなくて今も金髪のままの頭
ニコニコしてるのは変わらない筈なのに何かが違う・・・って、思っちゃって。なんか別人みたいで・・・怖くて
智は自己主張するタイプじゃなかったから突然の変化に心がまだ追い付けない
穏やかな笑顔と口調にだんだん癒されて、ヤな事があった日や落ち込んだ日なんかは隣にいるのも許してくれてたけど
今は近付かせない何かがある・・・気がする
大人になってもっと色々なものを知っていったら、急に遠くなってしまったあの背中に追い付けるようになるのかな
あの人の手を捕まえられる自分になれるんだろうか
このモヤモヤする胸のしこりを取り除く事が出来るのかな
「あ」
「え?」
「あそこのカフェ」
相葉さんが思考の海から引っ張り上げるようにグイグイ腕を引いてくるから、指の向けられた向かいのカフェに視線を移す
歩道の脇に植えられた木々の隙間から見える、透き通るような金髪に覚えがあった
「智・・・?」
「あ、だよね?大野先輩だよね。一緒にいるのは彼女かな」
相葉ちゃんはお父さんたちが再婚する前の智を知ってる。智はだいぶ有名人だったらしい
そんな事より──…
「かの、じょ」
相葉さんの言葉を繰り返す。こちらに背中を向けて座ってるから彼女の姿はよく見えない
でも明らかに智はその人に向かって微笑んでる・・・家では見なくなった、柔らかな笑みだ
急に息が苦しくなった
智に、彼女
だからいきなり髪を染めたの?
黒髪がいいって、似合ってるって褒めた私の言葉なんて聞かないで?
智はその人がいいの?
・・・私より?
ズキン、ズキン、ズキン
胸のモヤモヤがどんよりともっとずっと重くなった気がして混乱する
智はただのお兄ちゃんのはずなのに。この胸のズキズキはなんなの
(つづく)