SFコメディー連載小説 いつも坂の下で待ち続ける城水家の諸事情 -15-
「それをどこで見たんだ?」
「上…」
雄静(ゆうせい)は徐(おもむろ)に家の屋根上を指さした。城水はゆっくりと雄静の指の先を見た。オレンジ色の夕焼け空以外、何も見えない。
「いつ頃?」
「さっき…」
「さっき、って?」
「一時間ほど前…」
「それから、ずっとここで見てたのか?」
雄静は黙って頷(うなず)いた。城水は腕組みし、冷静になろうと努めた。今日一日は妙なことばかりが起きていた。朝の出がけに運転する車窓から見た塵(ちり)ひとつ落ちていない坂の下の道、到真(とうま)、雄静のUFO目撃談である。
「まあ、中へ入ろう。ママ、帰りが遅いって、よく心配しなかったな」
「ママなら、僕が帰ったの知ってるよ」
「なんだ、そうか。…そりゃそうだろうな。一度、入って、また出たってとこだな」
いつもは、帰るとおやつを食べている雄静である。ランドセル姿のまま外にいる雄静を城水は初めて見た。二人はドアを開け、中へ入った。
「ママには言うなよ!」
玄関を上がり、城水は雄静に小さな声で言った。城水は二人の秘密が今日で二度目だった。