SFコメディー連載小説 いつも坂の下で待ち続ける城水家の諸事情 -11- | 水本爽涼 歳時記

SFコメディー連載小説 いつも坂の下で待ち続ける城水家の諸事情 -11-

 城水は、こりゃ、バイクかオートバイの仕業だな…と推理ドラマのように勝手に億測(おくそく)した。だが、事実はそうでもなかった。それは後々(のちのち)、知らされることになる。ともかく、綺麗になったのは結構なことだ…と思い直し、城水は徒歩で駅へと向かった。急勾配(きゅうこうばい)の坂を車で降り切るまでが約10分、駐車場に車を止め、徒歩で駅まで歩くと約5分、いつもの決まった列車に揺られて10分、着いた駅から勤務する大聖小学校までが徒歩で5分、合わせて約30分の通勤時間である。まあ、一時間以上かけて通勤する教師もいたから、まだ有り難い方だろう…と城水は思っていた。
「先生、おはようございます!」
 校門前で出食わしたのは、いつも遅刻ギリギリに遅く登校する到真(とうま)だった。到真
の場合、出来は今一だったが、ハイテンションでクラスの雰囲気を明るくしたから、城水もその点では一目(いちもく)置いていた。ただ、生徒達の手前、遅刻ギリギリだけは注意した。その到真が、今朝は早かった。
「ははは…どうした、到真! 何かあったか?」
 城水は冷やかしぎみにニヤけて言った。
「先生! それが大変なんです! 僕、見ちゃったんですよ!!」
 到真は少し震え、怯(おび)えるような声で言った。
「なにを?」
 城水には到真の言葉が、まったく解せなかった。