SFコメディー連載小説 いつも坂の下で待ち続ける城水家の諸事情 -9- | 水本爽涼 歳時記

SFコメディー連載小説 いつも坂の下で待ち続ける城水家の諸事情 -9-

「今の話と関係があるんですけどね。どうも奥様方からもこの一件で苦情が出てるそうなんですよ」
「ほう! それで?」
「誰かは分かりませんが、車から見られたんでしょうね。目障(めざわ)りだから奥様会が清掃業者を手配したそうなんですよ。それって、お届けが必要なんざまぁ~すか? ということだそうです」
「なんだ、人騒がせな! 届けなどいる訳ないじゃないか! 勝手にやらせとけっ!」
 普段は滅多と怒らない昆布(こぶ)巡査だったが、このときばかりは声を荒げた。
「いや、昆布さん。あの連中は無視できませんよ。この前なんか、内閣の危機管理室のお役人から電話があったでしょ?」
 藻屑(もくず)が息巻いて言った。
「ああ…そういや、そんなこともあったかなあ」
 過去を思い出したからか、怒っていた昆布の顔が急にしょぼくなった。
「もし今度、電話があったら、適当に言っといてくれ。俺は苦手なんだよ、あの連中は」
「直接、来られたら、どうするんです?」
「そのときは、そのときさ。ははは…」
 昆布は自信がないのか、寂しく笑った。
「まあ、考えようによっては、街が綺麗(きれい)になるんだから、いいじゃないか」
「はあ、それはそうなんですがね」
 二人は無理に自分達を納得させて笑った。結局、この街で、奥様会の存在は侮(あなど)れないということになる。