SFコメディー連載小説 いつも坂の下で待ち続ける城水家の諸事情 -6- | 水本爽涼 歳時記

SFコメディー連載小説 いつも坂の下で待ち続ける城水家の諸事情 -6-

「だから、言ったじゃない、奥様会だって」
「ああ、それは分かったが…」
 城水はゴージャスなドレス姿の里子を頭から足下まで見下ろしながら、だいたい、こんなドレスをいつ買ったんだ? という疑問が沸々(ふつふつ)と沸いた。それに、はっきり言って似合わない。城水は必死で笑いを押し殺した。
「これでも、地味だったのよ…」
 城水の意を解してか、里子は弁解した。
 奥の間へ入った里子は、手早く普段着に着替え、城水が食べ終えたカレー皿を洗い始めた。城水はこっ恥(ぱ)ずかしくて言えなかったが、里子の主婦としての出来は、それなりに認めていた。手料理はまずまずで、家事もひと通りは熟(こな)してくれたからだ。
「なんだか、大変なのよね…」
 カレー皿を拭(ふ)きながら、里子が愚痴っぽく言った。
「なにが?」
 新聞をまた広げながら、城水は欠伸(あくび)をした。
「奥様方に決まってるじゃないっ!」
 里子はなにが気に障(さわ)ったのか、急に怒りだした。
「どうしたんだ、お前?」
 城水には里子が怒る訳が分からない。
「アレでさぁ~、そいでコレのソレよ」
 里子はつまびらかに城水に説明した。