コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ⑤<47> | 水本爽涼 歳時記

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ⑤<47>

 公(おおや)の電波を猫語で語り続ける・・というのも、猫として如何(いかが)なものか? と思えたのである。
『もう、結構です。続けて下さい!』
 小次郎はニャゴるのをピタリとやめ、最後に人間語で短く話した。里山も小次郎が何を猫語で話したのか、は事前に聞かされておらず、内容は意味不明だった。しかし、俳猫の股旅(またたび)が話した[立国]という文言(もんごん)の影響を受けた内容だろう…とは分かった。早い話、猫国の独立宣言である。イギリスからアメリカが独立したときのような立国宣言・・いや、これは少し違うだろうが、まあそんな感じの話だろう…と里山は感じていた。小次郎が言ったあと、会話の進行が止まった。
「あの…小次郎君は今、何を話したんですか?」
 次の瞬間、学者の一人が唐突(とうとつ)にポツリと呟(つぶや)いた。
『…いゃ~、僕達猫間でよく話す、つまらない挨拶ですよ…』
 小次郎には人間を騙(だま)すつもりはなかったが、混乱を避(さ)けるためにも、ここは方便だろう…と瞬間思え、そう返答した。
「そうですか…」
 幸か不幸か、学者はそれ以上、突っ込まなかった。小次郎は心の底でホッ! と、安堵(あんど)した。まあ、いずれにしろ、人間と違って表情で内心を悟られることは、まずない。そこは上手(うま)くしたものだ…と、小次郎はニヤけた。だが間髪、置かず、次の質問が別の学者から矢継ぎばやに飛び出した。
「他に話せる仲間とかは、おられるのですか?」
 小次郎は、まるで矢場の的(まと)だな…と瞬間、思った。