コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ⑤<45> | 水本爽涼 歳時記

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ⑤<45>

 フロアでは、その声がインカム[通話連絡用装置]を通してFD[フロア・ディレクター]の猪芋(いのいも)にすぐ伝わった。猪芋は最近、BSから異動して元の古巣へ戻(もど)り、駒井の指示下にいた。
「…分かりました。すみませぇ~~ん!! ちょっと、休憩に入りまぁ~~す!!」
 猪芋は大きなジェスチャーで叫(さけ)んで中断を指示し、収録を止めた。スタジオは俄(にわ)かにざわつきだした。AD[アシスタント・ディレクター]の若者が騒ぎを鎮(しず)めようと右往左往している。それも当然で、CMカットが入る普通の休憩入りとは違い、小次郎の爆弾発言というハプニングがあったからだ。副調整室も、ざわついていた。
「どうします? 駒井さん。このまま行きますか?」
 スイッチャーがインカムを通して訊(たず)ねた。
「…誰も止められんだろ、小次郎君は。語るだけ語ってもらおうじゃないか。あとで切る、切らんは判断しよう! 十分後に再開!」
 副調整室の駒井がインカムで指示を出した。
「分かりましたっ!」
 駒井の言葉はフロアの猪芋や副調整室の操作員達に伝わり、全員が頷(うなず)いた。
「十分後に始めますっ!」
 猪芋はスタジオ内に聞こえるように叫び、駒井がインカムで伝えた内容を繰り返し伝えた。
「あの…小次郎は?」
 里山としては気が気ではない。思わず、猪芋に訊(たず)ねていた。