連載小説 幽霊パッション 第三章 (第九十六回) | 水本爽涼 歳時記

連載小説 幽霊パッション 第三章 (第九十六回)

  幽霊パッション 第三章    水本爽涼                                                                           
                                        水本爽涼 歳時記-幽パ③ 96                                   
     第九十六回
「おお! 君か…。見えんと、なんか不便だな」
『いいじゃないですか。電話してるかラジオを聴いてると思えば…』
「電話にラジオか。ははは…上手いこというな、君は。それよか、別状ないようで、よかったよ」
『ええ、お蔭様で…。案ずるよりナントカでした』
「産むが易(やす)し、か…。そうだな。私も変化なかったしな」
 二人(一人と一霊)は、お互い、陰陽の差こそあれ、ニンマリとした。
「ははは…。そう落ち込むなよ。また人間界へ戻れるんじゃないか、目出度いことだ」
『はあ、それは、まあ…』
「私の方は、その時点で君の幽霊以降の記憶は、完璧に消えてるんだろうがな…」
 今度は上山の方が少しテンションを下げた。
『課長! そう肩を落とさず…。生前の僕の記憶は残ってるんでしょうから…』
「ああ、そりゃそうだが…。ははは…、お互い、慰め合ってりゃ世話ねえや」
 二人(一人と一霊)は、ふたたび陰陽の差こそあれ、ニンマリと笑った。
 その頃、霊界では霊界司と霊界番人との間で、ふたたび霊界会議が開かれていた。
『…まあのう。影響力が大きいとはいえ、その者達が直接、手を下したことではないからのう。遣(つか)わした如意の筆を駆使したのであろう』
『霊界司様の仰せのとおりかと思われまする。では、そのまま昇華させるということで…』
『おお、それでよかろう。ただし、以前に申した十日ばかり後(のち)という期日は、ちと延ばさざるを得まい。もう少し世の変化を見極めてからでも遅くはあるまい』
『はは~ぁ! 具体的には如何(いか)に?』
『そうよのう…、半月ばかりもすれば、多かれ少なかれ、世の動きも安定するじゃろうからのう』
『では、左様に…』
『おお…』