連載小説 幽霊パッション 第三章 (第五回)
幽霊パッション 第三章 水本爽涼
第五回
『そりゃ、まあ、そうですが…』
幽霊平林も釣られて、陰気に笑った。
「で、どうしようか?」
『どうしようかって、僕に訊(き)かれても…。そこは、課長がリーダーシップをとって下さいよ』
「ん~っ! …じゃあ、まず二つの部分に分けよう」
『どういう風にです?』
「CO2を排出している物と、過大に排出したり、そういう物を製造する企業のメンタル面だ」
『発生物と企業心理ですか?』
「ああ…」
上山は徐(おもむろ)に頷(うなず)いた。二人は、いつもの要領で念じる内容を詰めていった。その纏(まと)めが完成したのは十日ばかり先である。そして、上山の家で幽霊平林が念じることになった。
『課長! 霊界での訓練で随分、この精度は高まりました』
幽霊平林は胸元から如意の筆を引き抜くと、上山の前へ示して云った。
「ああ、そうか…。しかし、私は、よすよ。国連ビルの上の悪夢がトラウマになってるからな」
『すみません…。あの時は、ご迷惑をおかけしました。でも、もう心配ないです。ここからでも念じられますから…』
『そうだったな。如意の筆の霊力は絶大だった…』
上山は、ほっとしたように湯呑(ゆのみ)の茶を啜(すす)った。その姿を見ながら、幽霊平林は無言で両瞼(まぶた)を静かに閉じ、念じ始めた。そして終わるや、いつもの仕草でニ、三度、如意の筆を軽く振った。
『今日は、企業のメンタル面を浄化しました。これで、自己反省する経営陣で溢(あふ)れ返ることでしょう。次回は排出物の停止でしたね。これは全世界にかなりの衝撃が走るはずです。なにせ、車とか、一切の温室効果ガスが一瞬にして止まるんですから』
「いやあ~。私には、まだそのことが信じられんのだよ、君。いくら荘厳な霊力といったって、一瞬にして科学を否定する事態を起こすしなあ…」
上山は怪訝(けげん)な表情で幽霊平林に云った。
第五回
『そりゃ、まあ、そうですが…』
幽霊平林も釣られて、陰気に笑った。
「で、どうしようか?」
『どうしようかって、僕に訊(き)かれても…。そこは、課長がリーダーシップをとって下さいよ』
「ん~っ! …じゃあ、まず二つの部分に分けよう」
『どういう風にです?』
「CO2を排出している物と、過大に排出したり、そういう物を製造する企業のメンタル面だ」
『発生物と企業心理ですか?』
「ああ…」
上山は徐(おもむろ)に頷(うなず)いた。二人は、いつもの要領で念じる内容を詰めていった。その纏(まと)めが完成したのは十日ばかり先である。そして、上山の家で幽霊平林が念じることになった。
『課長! 霊界での訓練で随分、この精度は高まりました』
幽霊平林は胸元から如意の筆を引き抜くと、上山の前へ示して云った。
「ああ、そうか…。しかし、私は、よすよ。国連ビルの上の悪夢がトラウマになってるからな」
『すみません…。あの時は、ご迷惑をおかけしました。でも、もう心配ないです。ここからでも念じられますから…』
『そうだったな。如意の筆の霊力は絶大だった…』
上山は、ほっとしたように湯呑(ゆのみ)の茶を啜(すす)った。その姿を見ながら、幽霊平林は無言で両瞼(まぶた)を静かに閉じ、念じ始めた。そして終わるや、いつもの仕草でニ、三度、如意の筆を軽く振った。
『今日は、企業のメンタル面を浄化しました。これで、自己反省する経営陣で溢(あふ)れ返ることでしょう。次回は排出物の停止でしたね。これは全世界にかなりの衝撃が走るはずです。なにせ、車とか、一切の温室効果ガスが一瞬にして止まるんですから』
「いやあ~。私には、まだそのことが信じられんのだよ、君。いくら荘厳な霊力といったって、一瞬にして科学を否定する事態を起こすしなあ…」
上山は怪訝(けげん)な表情で幽霊平林に云った。