連載小説 幽霊パッション 第二章 (第百十四回) | 水本爽涼 歳時記

連載小説 幽霊パッション 第二章 (第百十四回)

  幽霊パッション 第二章    水本爽涼
                                       水本爽涼 歳時記-幽パ② 114
     第百十四回

「どれどれ、一度、呼び出すか。こちらから呼び出さんから、君の方から現れてくれ、とは云ったが、無しの礫(つぶて)だからなあ…」
 戸惑(とまど)った上山だったが、やはり気になるとみえ、背広を脱ぎ、セーターに着替えると、幽霊平林を呼び出すことにした。卓袱(ちゃぶ)台を前に、上山がグルリと左手首を回すと、たちまち幽霊平林が出現した。パッ! と現れるとは、正(まさ)にこのことか・・と思わせる現れようである。
『はい! お呼びですか!』
 決めのポーズも板についた幽霊平林が格好よく現れ、上山にそう云った。
「おお、来たか…。約束じゃ、こちらからは呼び出さないってことだったけど、無しの礫(つぶて)だらら、現れてもらったよ」
『いや~、僕はどちらでもいいんですよ。それよか、丁度、課長に云っておこうと思ってたとこだったんですよ』
『何かあったのか?』
『ええ。課長に云われた武器の売り手の国家上層部の動きを探ろうと、下準備の調べ物をしてますと、売り手側の国のなんと多いことか…』
「そんなに多いのか?」
『ええ、世界で武器売却している国は十ヶ国以上なんですよ』
「十ヶ国以上だって?! そんなに…」
『はい。課長も驚かれたでしょ? いや~、僕だって霊界万(よろず)集を見たときは、びっくりしました。これじゃ、とても僕ひとりの力じゃ・・って、思いました』
「云っておきたい、って、そのことか?」
『はい、まあ…』
 幽霊平林は霊界番人に相談したことなど、一連の経緯を上山に話し始めた。
『ですから、僕の力というより、この如意の筆の荘厳な霊力を有効に利用せよ・・ってとこじゃないですかね』
「そうか…、霊界番人さんが、そんなことをな…。確かに君が云うように武器の売り手国家がそんなに多けりゃ、いちいち国家単位でやってられんわな」