連載小説 幽霊パッション 第二章 (第百十三回)
幽霊パッション 第二章 水本爽涼
第百十三回
『口籠(くちごも)りおって…。はっきり申さぬか。いつまでも聞いてはおれぬのじゃ。儂(わし)は忙しいのよ』
『ははっ! 返す返す申し訳ございません。その暴動や紛争の武器がなれば、そうしたことは起こらないのでは・・と課長、いや上司が申しまして…』
『それが、いかがした?』
『はい! ですから、その武器を売っている国に売らせなくすることが出来れば・・という話になり、僕が、…いやこの私めが霊界万(よろず)集でいろいろ検索したのでございますが…。余りにも武器輸出国が多いもので、とても私一人ではと、途方に暮れておったようなことでございました』
『それで、この儂を呼び出したと申すのか?』
『はい、さようにございます』
『ははは…。そのように細かなことを考えておったのか。そなたが申すことは、すなわち、人の心が為(な)す行いであろうが…。要は、もうひとたび如意の筆の荘厳な霊力を用いることに目覚めるがよかろう』
『…とは、いかがすれば?』
『そなたは実に嘆かわしい奴じゃ。そのようなことも分からぬか? 荘厳な霊力とは、すなわち、念が思いのままになる、ということよ。…あとは、自ら考えてみよ。ではのう…』
そう告げると、霊界番人の光輪は、跡形もなく消え失せた。
『この荘厳なる霊力か…』
幽霊平林は、胸元に挿(さ)した如意の筆を手にして、シゲシゲと見ながら、そう呟(つぶや)いた。
その頃、人間界の上山は、通勤を終えて我が家に辿(たど)り着いたところだった。
「何も音沙汰ないが、あいつ、上手くやってんだろうな…」
云うでなく漏らすと、上山は玄関ドアの施錠を解き、家中へ入った。
第百十三回
『口籠(くちごも)りおって…。はっきり申さぬか。いつまでも聞いてはおれぬのじゃ。儂(わし)は忙しいのよ』
『ははっ! 返す返す申し訳ございません。その暴動や紛争の武器がなれば、そうしたことは起こらないのでは・・と課長、いや上司が申しまして…』
『それが、いかがした?』
『はい! ですから、その武器を売っている国に売らせなくすることが出来れば・・という話になり、僕が、…いやこの私めが霊界万(よろず)集でいろいろ検索したのでございますが…。余りにも武器輸出国が多いもので、とても私一人ではと、途方に暮れておったようなことでございました』
『それで、この儂を呼び出したと申すのか?』
『はい、さようにございます』
『ははは…。そのように細かなことを考えておったのか。そなたが申すことは、すなわち、人の心が為(な)す行いであろうが…。要は、もうひとたび如意の筆の荘厳な霊力を用いることに目覚めるがよかろう』
『…とは、いかがすれば?』
『そなたは実に嘆かわしい奴じゃ。そのようなことも分からぬか? 荘厳な霊力とは、すなわち、念が思いのままになる、ということよ。…あとは、自ら考えてみよ。ではのう…』
そう告げると、霊界番人の光輪は、跡形もなく消え失せた。
『この荘厳なる霊力か…』
幽霊平林は、胸元に挿(さ)した如意の筆を手にして、シゲシゲと見ながら、そう呟(つぶや)いた。
その頃、人間界の上山は、通勤を終えて我が家に辿(たど)り着いたところだった。
「何も音沙汰ないが、あいつ、上手くやってんだろうな…」
云うでなく漏らすと、上山は玄関ドアの施錠を解き、家中へ入った。