連載小説 幽霊パッション 第二章 (第八十三回)
幽霊パッション 第二章 水本爽涼
第八十三回
「ああ、近所の小学校だ…」
『なんだ、そうでしたか』
ただ、それだけの会話だったが、昼になったことは上山も意識したから、作業を中断することにした。
「君は、いいだろうが、ちょいと昼にするよ」
『あっ! はい。生きてると辛(つら)いですね、三度の食事は』
「ははは…、そこへいくと君はいいよな。食わなくてもいいんだから」
『それは楽になりましたね。食事は美味しくて楽しいですが、毎日だと、いろいろと厄介ですからね』
「ああ、まあな…」
話が妙な方向へと転げたので、上山は口を閉ざして厨房の冷蔵庫へ向かった。冷蔵庫の中は三日ほど前に買っておいた水煮缶とビール缶が一本、それに深夜、コンビニで買った弁当一個のみで、なんとも味気なくシンプルだった。幽霊平林に出会い、それ以降、どこか上山の生活は偏(かたよ)りを見せていた。満杯になるほど詰め込まれていた冷蔵庫も、外食が増すにつれ、その容量を減らしていた。上山は、その冷蔵庫からコンビニ弁当を取り出した。
「500W(ワット)で、1分30秒か…」
上山は小声で呟くと、コンビニ弁当を電子レンジへ入れてチンした。上山の後方上をプカリプカリと漂っている幽霊平林は、その一部始終を、さも第三者的に眺(なが)めている。
『こうして食べるものがある日本は、ほんとに、いい国ですよね』
「ああ、そうだな。ソマリアやシリアじゃ、コンビニ弁当なんて年に一度、食えるか食えないかのご馳走だろうな」
『はい、僕もそう思います。それが消費期限や賞味期限が切れたらポイ捨てですからね』
「そうそう…。もったいない話だ。そのうち、日本は罰(ばち)が当たるぜ」
『ええ…。放射能汚染された食糧でも、アフリカじゃ取り合いだろうな…って思えます』
「君! いいこと云うな。そのとおりだ! 飢えや渇きには人間、耐えられんからな」
第八十三回
「ああ、近所の小学校だ…」
『なんだ、そうでしたか』
ただ、それだけの会話だったが、昼になったことは上山も意識したから、作業を中断することにした。
「君は、いいだろうが、ちょいと昼にするよ」
『あっ! はい。生きてると辛(つら)いですね、三度の食事は』
「ははは…、そこへいくと君はいいよな。食わなくてもいいんだから」
『それは楽になりましたね。食事は美味しくて楽しいですが、毎日だと、いろいろと厄介ですからね』
「ああ、まあな…」
話が妙な方向へと転げたので、上山は口を閉ざして厨房の冷蔵庫へ向かった。冷蔵庫の中は三日ほど前に買っておいた水煮缶とビール缶が一本、それに深夜、コンビニで買った弁当一個のみで、なんとも味気なくシンプルだった。幽霊平林に出会い、それ以降、どこか上山の生活は偏(かたよ)りを見せていた。満杯になるほど詰め込まれていた冷蔵庫も、外食が増すにつれ、その容量を減らしていた。上山は、その冷蔵庫からコンビニ弁当を取り出した。
「500W(ワット)で、1分30秒か…」
上山は小声で呟くと、コンビニ弁当を電子レンジへ入れてチンした。上山の後方上をプカリプカリと漂っている幽霊平林は、その一部始終を、さも第三者的に眺(なが)めている。
『こうして食べるものがある日本は、ほんとに、いい国ですよね』
「ああ、そうだな。ソマリアやシリアじゃ、コンビニ弁当なんて年に一度、食えるか食えないかのご馳走だろうな」
『はい、僕もそう思います。それが消費期限や賞味期限が切れたらポイ捨てですからね』
「そうそう…。もったいない話だ。そのうち、日本は罰(ばち)が当たるぜ」
『ええ…。放射能汚染された食糧でも、アフリカじゃ取り合いだろうな…って思えます』
「君! いいこと云うな。そのとおりだ! 飢えや渇きには人間、耐えられんからな」