連載小説 幽霊パッション (第百十六回)
幽霊パッション 水本爽涼
第百十六回
「なんだ…一端、消えたから、もう現れないのかと思ったよ」
『霊界へ戻っても、安定して止まれませんからねえ…、困ったもんです。まあ、疲れるってことじゃないんですけどねえ…』
「そうだったなあ。まあ、よかったら私の家でゆっくりしていけよ。私も一人だから話し相手にはなるしな、都合がいい」
『僕を利用しようってことですか?』
「ははは…、そんなんじゃないけどな。まあ、よければだ…」
『じゃあ、そうさせてもらいます』
「それにしても、今日は首を回さなかったのに現れたよな」
『あっ! それはすみません。緊急事態ですから、霊界でじっとしてられなかったんですよ』
「まあ、いいさ…。気持は分かるよ。私だって人の姿が全部、消えたときゃ、頭が真っ白になったからなあ…」
『パニくりますよね?』
「ああ…」
二人は道を歩き、いや、上山は歩き、幽霊平林はスゥ~っと流れながら話を続けた。
『ゴーステンを作らなきゃいいんですよね』
「ああ、そりゃそうだが、佃(つくだ)教授のところでも云ったように、それじゃ何の解決にもなりゃせんぜ。君は霊界で友達とかは?」
『はい…。それは霊界の決めで…』
「霊界の決め?」
『ええ、特別に許可されない限り、余りそういう、しゃべったりするの・・駄目なんです。あっ! また口が滑った…。もう、これ以上は訊(き)かないで下さい』
「ああ…。駄目なのか…。厳しい制限があるんだね、そりゃ、大変だ。私の方が生きやすいよ」
『ええ、そうなんですよ。なかなか死ににくいんですよ、あちらも』