スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第百二十七回) | 水本爽涼 歳時記

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第百二十七回)

 あんたはすごい!    水本爽涼                                     
                                      水本爽涼 歳時記-あ 挿絵127                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          

     第百二十七回

あとから気づいたことだが、会社で何げなく話していた時、それは発覚した。
 早希ちゃんとの初詣も終わり、数日すると新年の初出勤となった。
「いやあ、参りましたよ。お邪魔になるだろうと思い、早々に退散しましたが、まさか課長が若い娘(こ)と歩いてるなんて、思ってもいませんでした」
「ははは…、私だってまだひと花、咲かせるつもりなんだ。まさか、とは聞き捨(ず)てならんぞ」
 私は笑いながら、児島君に冗談めかして云った。
「あの時は云ってなかったんですが、妙なことがありましてね。それで私は新眠気(しんねむけ)の友人を訪ねたんですよ」
「なんだい? 妙なことって」
「いや、それがですね。あの日は、正月二日でしたよね?」
「ああ、そうだったな」
「それが…」
「どうした?」
「信じてもらえないでしょうが、お話しします。実は、あの日の朝はいい気分で一杯、飲んでたんですよ」
「そりゃ、正月だからね。…それで?」
「銚子を一本ばかりチビリとやってますと、急に友人の顔が浮かびましてね。無性に会いたくなったんですよ」
「そりゃ、そういうことだってあるだろうさ。仲がいいなら尚更(なおさら)だ。思い出した訳だなあ。…完璧に信じられるられる話だが、それがどうかしたの?」
 私は児島君がなぜ云い渋るのか不思議で、しようがなかった。