スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第九十一回) | 水本爽涼 歳時記

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第九十一回)

  あんたはすごい!    水本爽涼                                     
                                      水本爽涼 歳時記-あ 挿絵91                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             

     第九十一回                          


「さてと…。どこまで話しましたかな? …そうそう、今後、あなたの身の回りに起こること、それは取りも直さず、あなたの願望が具現化することだと云えます。分かりやすく云えば、次第にあなたの思い通りに物事が運んだり、なったりすることが増えてくということです」
「沼澤さん、それって、自分で制御したりは出来るんですか? そうじゃないと、とんでもないことになりそうな気がしますが…」
「心配しないで下さい。あなたの願望は必ず玉に伝わり、それを叶えるかは、玉の判断に委(ゆだ)ねられておるのですから…。まあ、常識外のことを除いては、ほとんどのことがOKになると思いますよ」
「それはいいんですが、私が念じたことは別として、例えばこの前、会社で起きた俄か景気ですが、ありゃ私が願ったことでも何でもないんですが…」
「それは玉の意志によるものですな。あなたの立場をよくしよう…と、玉が考えた結果です」
「なるほどねえ…。そういや、確かに鳥殻(とりがら)部長には偉く喜んで戴きましたが…」
「あっ! こんな時間か…。そろそろ私は帰ります。明日(あす)は特別講話を頼まれておりまして…。それじゃ、塩山さん。孰(いず)れまた…」
 沼澤氏はバタバタし始め、財布から紙幣を抜き出すとカウンターへ置いた。そして釣銭も受け取らずドアへ急いだ。ママも早希ちゃんも呆気にとられて、送り出す声がワンテンポ遅れた。