横浜の地図を見ていた。
外人墓地を目にして、ふと、”芝生の下で眠っていずに~”という歌詞の歌を思い出した。
そこワンフレーズしか覚えていない。
それなのに、ファラフォーセットみたいな髪型の、谷間の出る服着た派手でちょっとはすっぱな白人のおばさんが、海沿いの街の洋館の出窓から乗り出して話し掛けてくる様子や、
おばさんの家の玄関の古びた小花柄の壁紙に、今はいない船乗りだった夫や、若くて美人だった頃のおばさんの写真が額に入って飾ってある様子も目に浮かぶ。
気になって検索したらすぐ出てきた。
「青い瞳のステラ」という曲だった。
世代じゃないのに、ノスタルジーを感じる曲である。
子供の頃、親が見ていた懐メロ番組から聞くとはなしに聞いていて、頭の中で映像を作り上げ、その後、曲の方を忘れてしまっていた模様。
タイトル以外、歌詞中には”ステラ”という名前は出て来ない。
主人公は子供だてらにステラを”あんた”と読んでいる。
歳は離れているけど、対等な友達だったらしい。
曲中、祖国に帰る事を望みながらも、ステラおばさんは亡くなってしまう。
さっきまでしゃがれた(酒焼け?)声で笑っていたステラおばさん、たった一行で、墓の下。
その行間に10年くらい時が経過している。
”芝生の下で眠っていずに”というシーンでは、主人公はおそらく既に大人になっていて、そこ以外は冒頭から全部回想だったのが、最後の一文で判明する。
なんとも切ない、小説のような歌詞。
歌詞中、ステラおばさんはニュースペーパーに包んだ赤いキャンディをくれる。
記憶の中で、ステラおばさんがくれるのは、アルフォートだった。
小花柄の壁紙や、ステラの髪型、夫に関する記述もない。
勝手に脳内で捏造されていた。