「お客さん、連れの方はどうしましょう」

 「そこらに置いといてくれ。いつかは起きる」

 酔い潰れた相棒を置き半分の金を持って外に出る。



 さっさと森を抜け帰路につこうと早足で進む、冬が近づきつつある秋の夜、冷たい風が髪を撫でる。前に人影が十数人、棍棒や短剣、斧等の柄の物をもって待っていた。



 「ウィルお前も非道い事をするぜ。俺達の太客を破産させちまった」

 ウィルと呼ばれた青年は特に驚きも悪びれもせずに平然と言い返す。

「ここのボスは随分と親切だな。カモの心配をしてやるなんて、どうせあの旦那はいずれ博打で何も残らんさ。俺が取るかお前が取るか、早いか、遅いかそれだけだ」



 殺気立つ手下達を眼で抑えてボスはつづけた。

 「騙し取った金を置いて行け、全部だ。それで許してやる」

 「なるほど。悪くない案だ。そっちはてっとり早く金が手に入る。だが俺に何の利点もない」



 その返事を聞き手下に号令を掛けようと軽く空気を吸う間だった。ウィルは間合いをつめ隠し持っていた五寸釘をボスの喉もとにすえ、手下達が動きを止める。一呼吸後ボスの喉を正確に突き即死させ、その懐のナイフで事態の解らず、呆然としている手下の腹部を刺し彼の手に有る斧を奪う。


振り下ろし近くの手下を斬り、返す刀で後ろに回った敵をも斬り伏せた。三人、ボスが刺され反射的に飛び出し。鉈、棍棒、短刀を持ち。一面から各々に向かって来る。斧の背で鉈を受け止め鍔競り合いの状態で相手を盾に棍棒を受ける。


棍棒を受け倒れる鉈持ちの体をくぐり抜けて棍棒の男を斧で一閃ッだが、ナイフを構えた男がウィルに突っ込み影が重なる……男は倒れウィルの手には血に濡れた五寸釘。彼の周りには七つの死体が転がっていた。



 ウィルが斧を構えると残党に言い放つ。

 「半分ほど殺ったが、お前らはどうする?」

 残党は顔を合わせ一目散に逃げだした。三下の捨て台詞も言えないほど慌てていたのだろう。訳も分かれず、ボスを含めて半数を失ったのだ。



 「金目の物以外は山犬にくれてやる」

そうつぶやき現場を後する。

「夜風で酔いが醒めた。酒場で襲っていれば少しは違っていたかもな……」

酒が程良く回ってきた。博打狂いの地主にイカサマで勝てると吹き込んで、偽勝ちで金を握らせ次に大金を用意させる。まさか土地まで売っぱらうとは思わなかったが、嬉しい誤算だ。


そして今日相棒が手筈どおりに失敗を演じ、俺が殴り殺す。そして今、テーブルの上には賭けた筈の金。俺の横には死んだ筈の相棒が酒を飲んでいる。そもそも全て茶番だったのだから、イカサマの話は嘘。


信じ込ませる為の勝ちも相棒の申告で金を渡してやった。今回の金は相棒が懐に隠していただけだし。殴られて死ぬのも予定どおりだ。

ド田舎の賭博場、三人の男がテーブルを囲んでいる。年長の小太りの男が口を開き。

 「本当に大丈夫なんだろうね?」



 青年が冷静に彼を落ち着ける。

 「旦那。それを言うのは何度目だい? このあいだの事も忘れちまったのか?」

 「こっちは土地も売って全財産を賭けたんだ。しくじったら洒落にならんよ」



 青年は大男の方を向く。

 「ちゃんと、手筈通りに賭けたな?」

 「ああ、もちろん言われた通りに六の五に全額……」



 青年は表情を厳しくして、大男に聞いた。

 「お前いまなんて言った

 「言われた通りに賭けたって」



 「違うその後だ」

 「ああ、六の五に……」

 立ち上がって、殴り飛ばす。



 「馬鹿野郎、 俺が言ったのは六の五じゃなくて、五の六だ‼」

 それまで小太りの男は茫然としていた。だが否応もなくそうしてもいられなくなるのだった。若者が横たわっている男の前に座り込んで彼に一言伝える。



 「旦那……やっちまったようだ」

 「何ッ! おい嘘だろう……」

 「旦那……今すぐに逃げてくれ、ここは俺が何とかする。だからすぐに」



 青年は静かに、そして重みを置いた口調、年長者の逃走を促す。

 「…………」

 訳が解らず黙った目撃者にさらに声を上げて逃走を強いる。



 「巻き込まれたく無かったら、さっさと逃げろ! 速く‼」

小太りの男が言われるがまま立ち去った。ド田舎の賭博場。一人残った若者は横たわった男の頬を叩きながら話しかける。



 「おい、生き返っていいぞ」

 「ああ、うまくいったか」

 「いったさ。尻の毛も残らないほどに奪ってやった」