とぼとぼと森を歩いていた。家に死体をそのままに、俺みたいな者の抗争に一般の娘を巻き込んだ。あの娘、あんな事がなければ結婚して人並みの幸せを手に入れていただろう。いや、あの容姿だ。いい相手なんていくらでもいるし、居たのだろう。やるせないな。



 「人の子よ。またあったな」

 昨日の悪魔がまた俺の前に現れた。悪魔の口ぶりからすると昨日の事は夢ではなかった様だ。または今夢の続きを見ているのかもしれない。



 「帰れ。悪魔今は、お前と遊んでやる気分ではない」

 「どうしたのだ。人の子よ? 悩みがあるなら聞いてやろう。魂を渡せば無くす事もできるぞ」



 「一つ聞いていいか? 俺のように人を騙し、殺し悪魔とかかわる奴と悪魔との契約した奴は同じように地獄にいくだろう」

 「当然だ」



 「それだと、契約っていうのも悪い話じゃ無いな。結局行くところは同じなのだから」

 「違いない」

日中の日差し、閉じた目に差し込みゆっくりと開く。横に視線を移すと火の入っていない鍛冶場。

 変な夢を見た。立ち回りを演じた時には酔いは覚めていたはずだ。昨日奪った斧が置いてある。黒豹の悪魔と話す夢だった。



 そんな事を考えていると戸を叩く音がした面倒なので居留守を決め込むつもりだったが客が余りにしつこく戸を叩くので仕方なく開けることにした。

 「あなたが騙し盗ったお金を解してください!」



 ブロンドの美しいお下げを肩に掛けた。娘はドアが開くと同時に口も開く。

 「私の父を騙し土地まで売らせて……キャアッ」

 肌蹴たシャツから覗く肌に驚いたのだろうかブロンドの娘は一目散に逃げ出した。

ほうって置いても良かったが寝起きのまま迎える失礼をそのままにしておくつもりも無かったので身なりを整えて後を追う。


「先程は失礼しました。えーとなんのごようでしたか?」



 慣れない丁寧な口調で話しかけたのは田舎娘の格好をしているがどこからか田舎娘のそれとは違う一種の品性を感じつい言葉を選んだ。

 話を聞いてみると彼女の名前はドウリといい、昨日騙した地主の娘ださそうだ。それで俺に騙し盗られた金を返すようにとの話だった。


昨日の今日でここまで調べて来るとは素晴らしいお嬢さんだ。ただ向う見ずのお転婆とも言えなくもない。

 「ウィルさん、はやく返してください。はやく、はやく、はやく」



 ただミスドウリは俺から“はい、すいませんでした”と返してもらうつもり満々でいる。

 “はい、すいませんでした”って返すくらいなら端から騙したりしない。賢いのか馬鹿なのかよくわからない人だ。


そうこうしている間に俺の家まで付いて来てしまっのだ。

 勢いで家の中まで付いてきやがったこの馬鹿、少しは遠慮するものだろう。一応“おじゃましす”と挨拶するな。



 「あれ? ウィルさん鍛冶屋だったんですか」

 「ああ、細工もできるぜ。首に掛ける十字架やペンダントでも作ってやろうか」



 好意半分、帰らせたい半分の提案を彼女は少しあわてて断ってきた。

 「えッ! いえ……結構です」

 欲しいのか、十字架。



 「そうかい。初めに言っとくが金を返す気はないぜ」

 「返してくれるまでここにいます」

 「夕方になれば帰るだろう」



 「明日もきます」

 厄介な女に付きまとわれる事になってしまたな。ん? 昨日持って帰った斧がなくなっている。



 「ドウリッ! 俺から離れるな」

 「え?」

 振り向いた瞬間、人形の様に綺麗だった彼女は物陰から出てきたメイスで頭を割られ見る影も無くなる。



 俺は考える前に動きメイスの男の後ろに回り首を思い切り横に回した。神経が切れ絶命した男を捨て、家の中にいた残る二人をドウリの血のついた鎌で殺す。殺した男達は昨日潰したチンピラどもの残党だった。



 「馬鹿野郎、一般人を巻き込みやがって」

 自分にそして死体となった男達につぶやく。

冷たい秋の夜風と血の香りを纏い。進む帰路、不運にも彼は出会ってしまった。

歪にうねる枯れ木の上で咆哮する黒豹にその姿にただ魅せられ立ち尽くしていた。



「人の子よ。覗き見とはあまりよい趣味ではないな」

黒豹はコッチを向かずに声をかけてきた。

「……」



「如何した? 黙り込んでうぬに口はあるように見えるがな」

「お前は魔物なのか?」

「どうしてそう思う?」



「俺の前に神や天使が現れる覚えは無いからな」

「ククッ悪魔なら現れる覚えは有るのか人の子よ」

「幾らかはな、でどうした俺の魂でも採りに来たか?」



「人語を解す豹がいても驚かず、悪魔の現れる覚えがあり。その上、吾輩が夜風にあたっているところに魂でも採りに来たか? うぬは悪魔と話すと取り入られると教わらなかったのか、それとも余程己に自信があるのか、どちらにしても面白き人の子よ」



黒豹は機嫌がいいのか饒舌だ。

「全くその魂、欲しくなるではないか」