楽しい時は風の様に過ぎ去ってしまうものらしい。俺も浮かれてどうかしていた。すぐ近くに来るまで気づかなかったのだから……。

「おい、鍛冶屋……」

 酒場で屯していると、見覚えがある大男が隣に座ってきた。

 「なんだ。木偶の坊か最近みなかったなぁ」



 大男はテーブルの上に金の音をたてて袋を置く。

 「なんだこの金は?」

 「毎日通っている娘がいるそうだな、前祝いだ」



 「ただのストーカーだ。そんなんじゃない」

 「事がうまく進みすぎて不安なのか? まあ兎に角とっておけ」

 そういうと大男は何処かに行ってしまった。



事が上手くいきすぎて不安か、確かに上手くいき過ぎだ。不安になるほどにな、だが上手くいっては困る。二度もあいつを巻き込むわけにもいかないしな。

ドウリは、明言した通り毎日きやがった。

退屈だからと家事をしてくれるのはいいが、

 「昼間からふらふらしていてはいけません。鍛冶屋さんとしての仕事も、道具の、時間も、材料もあるでしょう」



 と煩いので仕方なく働いた。もともと腕が良かったのかそれなりに儲かったし。周りはあっさりドウリを受け入れた。結婚は何時だと笑えない冗談を言ってくる奴までいた。