畜生、最近平穏すぎるからってどうかしていた。しかしあの数いったい何で俺を追う。前に人陰夜中に森の中にいることは十中八九敵だろう。兎に角情報が足りない。敵を捕まえて事情を聴こう。



考えを纏めると飛びかかり、押し倒し、右腕をおさえ、首に刃を立てた。

「何もしゃべるな。何も音をだすな。なにもうごか…………なんだ、ドウリか」



そこには見知った顔があった。しつこく俺を追いまわす人形の様に整った顔。

「どいてもらえます。重いし、嫁入り前に変な噂がたったら困ります」



動揺しているのだろうか、彼女はやや丁寧な言葉で不自由を訴える。

「十字架を忘れたのを気付いて取りに来たのですが、あなたはどうしてこの森にいるのですか?」



いや、乱暴に抑えつけた事を怒っている。慇懃な口調でそれを主張している。人が武装した野郎どもに追われているのに、この人は平和というべきか、緊張感がないというべきか、悩むところだ。



「!ッ」

彼女の口と頭を押さえこんで見つからない様に藪の中にしゃがむ。そのまま隠れつつ耳元で状況を説明した。



「そういうことだ。俺が奴らを引き付けるからじっとしていろ」

そう言って忘れ物の木製の十字架を置くと藪から出ようとした。こいつを二度も殺すわけにはいかない。



「待って、行っちゃいけない。行ったらウィルはきっと死んじゃう」

立ち上がって腕を掴んできた。俺が振りほどいて歩き出すと彼女は前に回り手を握って唇を重ねた。握られた手には木の質感がする。



「お守り。帰ってきてくださいね。ウィルさん」

そう言って藪に戻ろうした彼女の動きが止まった。

「ごめんなさい……ウィル……天国でまっているよ」



彼女の胸には矢、俺の視線の先にはボウガンを構えた男いる。

「この外道ッ! キリスタンにポウガンつかいやがってええ‼」

次の瞬間投げた斧が射手の命を奪った。

「しかし、この十字架随分と古いな。以前に新しい十字架の話をしたら反応したから作っておいてよかった。ん? 物音か庭を動物が荒らしに来たのか?」



外を見るために窓を開ける。その時。

「居たぞ! ウィルだ」

「殺せ! 細切れにしろ」



「うおおッ死ねええええ」

窓、扉、各々の武装した男達が入れる所から一斉に家の中に突撃してきた。ウィルは手元にある斧で応戦する。



「数十人で襲って来るとは、最近の強盗は物騒だな」

そんな事を言っているものの反応が一瞬遅れていたらそうも言えなくなるだろう。



暗さに慣れていないうえ、囲まれしかも数の上でも不利なのでウィルは囲みを強行突破して森に逃げ込む。



ん? あいつは確か確かいつか賭場がらみでドウリの親父を騙した。時の小悪党ども大半は死んだ中で運よく生き延びた奴の一人だったな。

 「ウィル何を見ているのですか?」



 「なんでもない」

 普通の生活ではなんでも無いはずだった。時に殺し、時に騙すそんな生活を一時していた様な奴以外は、俺に恨みを持つどこかに逃げたはずの奴が返ってきた事が死活問題になりかねない様な奴以外。



 「ねえ、ウィルさん。聞いた話なのですが昨日大勢の人相の悪い旅人が宿屋に来たみたいですけどなんでもここらに彼らの世界での賞金首がいるらしですよ。怖いですね」



 話を無視して別の話題に変える。

「お前もしつこい奴だよ。お前も返さないのは分かっているだろう。もう来るだけ無駄だって」



「来るか来ないかは私が決めます。それから明日も来ますから」

そう言って帰っていく。

「全く。十字架忘れているぞ」



彼女が持っている木製の忘れ物を懐から取り出した。金属製の十字架と見比べる。

「あとは磨くだけだな」



仕事の合間にあいつの目を盗んで作った品当然あいつの十字架と同じ形だ。

「さて、今夜は頑張るか」

夜、数人いや数十人の人が森の向こうにある。鍛冶屋の家に向かっていく。


彼らは家を囲みいま飛び込もうとしていた。