ローマ人の物語も24巻目です。
飽きっぽい自分がよくここまで続くなと思うのですが、ひとりの人を扱った話ではなく、1100年にわたる物語ですから、次々と登場人物が変わるから、大丈夫なのかもしれません。
同じことをしても、同じ考え方でも、時代が違えばその成果も違ってきて、幸せに生き抜く人もいれば、無念の死を遂げる人もいる。
だれもが正しいと思う道を歩きながら、それに賛同する者がいる人と離れてゆく人がいる。
24巻のメインは皇帝トライアヌス。
紀元2世紀、当時のローマ人が「黄金の世紀」と呼んだほど、充実した時代です。
前帝のネルヴァから数えて5人の皇帝の時代を「五賢帝時代」と言われていますが、そのネルヴァに指名されて皇帝となるトライアヌス。
史上初、ローマではなくスペイン南部出身の皇帝の誕生です。
ローマの不思議なところは、ローマを守るために戦争を行った結果、属州や同盟国など領土が拡大してきたのですが、そこで次々とローマの市民権を与えることで国の安全や安定を図ってきました。
イギリスがインドの支配階級に議員の権利を与えたりしたことがあったでしょうか。
そして、かつての日本も、、、
とにかく領土を広げ、ユダヤ問題や一部の同盟国の反乱などあったものの、経済的にもまだまだ成長期にあったローマでは、ドミティアヌスの恐怖政治が終わり、ネルヴァのワンポイントリリーフの後、軍団の経験者でもあり、政治的にも問題のないトライアヌスを「素直に皇帝として受け入れる」環境が整っていたのです。
そしてトライアヌスは、市民や元老院の期待に十分応えました。
皇帝の仕事として求められる①国家の安全②社会のインフラ/それを体現すべく、防衛線の再編、社会基盤の整備、福祉の充実させたのです。
さらにはダキア(今のルーマニアあたり)やアラビアの併合を成し遂げ、この時期に帝国の版図は最大になりました。
その上その判断は公正であり、かつての皇帝のように身内にそれを継がせるための小細工もなしでは、ローマ市民や元老院も文句のつけようがありません。
この時代、ドナウ河に石で作った全長1135mの橋をかけているのですが、その名は「トライアヌス橋」。
すでに相当の技術力を持っていたことが分かります。
国力の充実と、それに連動した軍事力の拡大。安定を求めるがあまり、これまでのローマが決して自ら仕掛けて戦争をしなかったにも関わらず、パルティア王国(現在のイラン、アフガニスタン)に攻め入るまでしてしまったトライアヌス。
ローマの神々は、守るために攻め入る戦いには力を貸すものの、そうでない時には冷たいのかもしれません。
パルティア攻撃は苦戦を強いられます。
そして、戦線が膠着した中でトライアヌスは体調を崩し、そのまま死んでしまいました。
その後の治世は、トライアヌスが親代わりとして育ててきたハドリアヌス。
このハドリアヌスは、このパルティア戦線の撤収に苦労します。
属州生まれで、まさか自分が皇帝になるなどと思ってもいなかったにも関わらず、皇帝としての治世は賢帝と呼ばれるにふさわしいものでした。
最後のパルティアとの戦いも、撤収というローマ人にとって最も恥ずべき行いをしないままに世をさることができたトライアヌスは、幸運の皇帝とも言えるでしょう。
ふー。24巻読了です。