クソみたいな兄貴がいる。
殺してやりたいと思ったときもある。
いなきゃ良かったと思った事はないけれど。


一つ歳が離れた兄貴は、いつからかダメな大人になっていった。
仕事もまともにせんと、遊びばかり忙しくなり、なにかに理由をつけては就職した仕事を辞めた。

時には『FFってゆうゲームが面白すぎて仕事を辞めたよ』とか、ふざけた野郎なんだ。

俺に金をせびりにくるのは当たり前になり、他人様からも借金していくようになった。


俺は、そんな兄貴を重荷だと思い、嫌いになっていった。

大好きだった小さい頃の兄貴は、凄いスピードで邪魔物になっていく。
その感覚が嫌で、俺は兄貴を忘れようと心に誓った。
友達から連絡があった。

『お前の兄貴が金を返さない。』

俺はその友達にすぐに金を返した。
その時友達は『あいつ、今ならなんだってやる。泥棒も、人殺しも。』

それを聞いて、少し戸惑った。


親父が死んで、母が消え、俺には身内がいなかった。
それは、兄貴にも同じ事。二人が重ね合うモノは、血の繋がった兄弟ってだけで、迷惑だけをかける関係ではないはず。それを理解してお互いがお互いを支え合う、なんて事もしなかった。


時に、遥か昔。まだ幼かった僕等は二人は、数える程度の親戚をたらい回しにされ、最終的には施設で育った。しかし僕等はそれが幸せだった、大人の顔色を窺うなんて事もなくなったからだ。

欲しいと願うモノはいつも一緒で、兄が手に入れれば二人で使い、僕が手に入れれば兄にも使わせた。

兄が16歳になったころ、兄は一人で暮らしたがった。
定時制に通う理由をつけて一人暮らしを始めた。

僕が16になる頃、兄が傷害で捕まった。迎えに行ったのは僕で、警察はそんな僕を同情した。
それからもしばし兄は警察の世話になった。
迎えに行くのはいつも僕で、帰り道僕はいつも兄に説教をした。


それからしばらくして兄が就職し、それを兄弟二人で祝ったりもした。

その頃から二人暮らしをしていた。僕が家に帰ると、机の上に書類が放置してあった。
健康診断のやり直し、と書いてあるようだ。僕は気にも止めず、アルバイトに出かけた。

それから数日して、また同じような書類を見つけ、僕はいい加減兄に苦言を指した。
『いい加減病院行けよ、会社行けなくなるぞ』じれったかった。胸騒ぎがして。



それは、三回目の再診断書だった。


兄は、死んだ父と同じ病に蝕まれていた。


ばばあが歩いて来たんだ。
すっごい腹した、白髪混じりのクソばばあが、僕の方へ、歩いて来るんだ。


なにかで知り合ったばばあは、僕と二人きりで会いたいとぬかしやがった。

僕は用事用事で先伸ばしにしていたんだけど、ついにおっけ!をしてしまったんだ。なんでかわかんないよ!



何処かの野球場のバックネット裏に呼び出された。
高校生の時に告白された場所に似ている。

コーヒーを震えた手で掴んで、震えた唇をつけながら勢いよく飲んだ。

向こうから歩いてくるのはあのばばあだ。

飲み込んだはずのコーヒーを勢いよく吐き出した。


だって、想像を上回る程の迫力で、僕を見つけるなり笑ってるの。

夢じゃない。冗談じゃない。


こんな所誰かに見られたら、、、。


ばばあは『はーい↑↑☆』てゆう。

僕は『はあーい↓↓』ていう。


ヤマンバに似ている。原人っぽかった。
それがアメリカンに『HA-I』ってゆう。空は屋根が邪魔して見れなかったよ。




車がありえない程揺れていたと思う。
真昼間の、公園の駐車場、お昼休みの営業車で埋め尽くされた駐車場で、一つだけの空間、現実とも言えぬ世界の片隅でばばあは僕の魂そのものを吸い付くす様にアソコを吸われた。


全てが終わり、車を後にするけどばばあは窓を開け、『おーい(^O^)/しっぽ、出てるぞ、、☆』乱れた服装、ワイシャツの裾が出ていた。


タバコに火を付けた。
太陽は僕を照り、風は僕をすり抜けた。

魂を取られた人間はこんな風になっちゃうんだ。

太陽を睨んだ。


お前は全てを見ていたんだろ?太陽よ。

僕はお前の下で殺されたんだ。
振り返れば暗い道だった気がする。

その道には輝く道標みたいなモノが備え付けられてた。

信号のような、それが見えなくなるまで青だった。




楽になりたかった。無になりたかった。
こんなはずではなかった。


街灯が照らされた自販機でコーヒーをかった。

一口飲むと、苦味が広がる。それを想定していたから、ほんの少量。にも関わらず目を深く閉じた。




なんの話?

俺の話。


まだ語れない、俺の、話。