2015年元旦 「何となく、ミニバイクレース界の発展を考えてみる」 三の巻っ!! | 大西二輪塾

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Project to forging in environment compete

 前回は競技系とエンジョイ系に分け、レースに求められる要素を整理し「継続」への要素を考察して見ました。

2015年元旦 「何となく、ミニバイクレース界の発展を考えてみる」 の巻っ!
2015年元旦 「何となく、ミニバイクレース界の発展を考えてみる」 二の巻っ!!
 http://ameblo.jp/0024jyuku/entry-11999132718.html

そこで解るのが競技系とエンジョイ系はレースに対して、求める事柄が大きく違うと言うことです。
それでは、ミニバイクレース界の発展に求められるレースの方向性と要素とはどんなものなのか?
そして、どういった事を意識すべきなのか?
考察して見たいと思います。

方向性要素

レースの特徴を知るために、要素のキーワードを上げて重要度順に並べてみました。 


「コスト」はミニバイクレース共通のキーワードとして明確です。

特徴として挙げるとすれば、競技系は「イコールコンディション」エンジョイ系は「手軽」となります。
この要素、相反する項目が多いので、エンジョイ系要素を取り入れていけば競技性が減少するなど、どちらも立たせる事は難しいでしょう。
他にエンジョイ系は独自の特色が出される事が多いです。
たとえば「団体戦」耐久レースや「観戦者の新規参加」レン耐など、主催者の数だけ特色があります。

運営内容と方向性

 方向性に関して、個々の場面で様々な論争があります。
キンスポ杯での例を挙げると、タイヤウォーマー解禁問題があります。
このタイヤウォーマー解禁はコストと言う障害の発生から、新規参加に大きな壁を作ってしまう問題であり、「新規参加者を大切にし、本物志向のレースを目指す」キンスポ杯の方向性に関わる事とも言え、現在も賛否が激しく議論されています。

 競技系の本丸であるマルチ杯では、「敷居の高さ」が議題に上げられた事がありました。
これは、高い競技性や歴史から生まれる部分であり、「敷居が高いからこその名誉」を欲する競技系ライダーは好みますが、エンジョイ系のライダーからは嫌がられる場合が多く、結局は敷居を下げる動きが見られました。
相反する方向性を持つ系統の融合で「新しい価値」が生まれる可能性もあります。
ただ、「敷居の高さ」も新規参加者や継続参加者を刺激出来る材料で、強みの一つとして数えられます。
タミケンは過去、参加者達の情熱によって積み上げられた、他に追随出来ないマルチ杯の価値をわざわざ消す事に否定的で、方向性を融合させる場合においても大事にして頂きたい貴重な価値であると思っています。
「突き詰めて競うからこそ、支持されて感動を共有できる」
そうマルチ杯を表現された先輩がいました。
タミケンも共感な一言です。

発展に向けた昨今の優先順位

レースイベントの「方向性要素の強弱問題」は、競技人口減少に起因する場合が多く、クラスの集約などを行なう場合や、方向性の調整を行なう場合によく表面化します。
「レースに関わる者」その立場の違いによって求めるレースイベントの姿、すななわち「レースの価値」は違いますので当然の事とも言えます。
その「価値観の違い」を解りやすくイメージする為に、「ミニバイクレース界に関わる者」を大きく5者に層別し考察してみました。


 参加者
人員やイベント費用を支出する「主体者」と「協力者」

 関係者
仕事として収入を得る「生産者」

 ライダー
結果へ向けて取り組むタイプ 「競技系」
楽しむ、向上をキーワードにスポーツとして取り組むタイプ 「エンジョイ系」

 サポーター
ライダー以上に参加意識を持っている場合もありえる 「家族」
時にメカニック等味方であり、時に障害でもある 「友人・恋人」
直接的にレースへと関与しない企業・団体 「支援・協賛企業」
チーム管理者や先輩、ロードレースチーム管理者 「育成関係者」 

 観戦者
二輪趣向者やサーキット場、雑誌、WEB等で情報入手 「ライダー予備群」
過去ロード、ミニ問わずレースを経験した隠居ライダー 「リターン予備軍」
レース内容、個人ヒストリー、スタイル等の趣向者 「ファン層」

 レース専業企業
レース運営団体や組織「主催者」
レースを主体とする二輪関連商品やサービスを販売している企業

 二輪関連企業
一般向け二輪関連商品やサービスを販売している企業
 ※モトチャンプ誌等「メディア媒体」

上記5者の中でも、レースとの関係性や関係度合いで、求めるレース像は違いますが、
5者は相互作用をもたらす仲間でもありますので、全て大切です。
それでも、「方向性要素の問題」(運営内容やレギュレーションなど・・)が出てきた場合はこの5者に優先順位を付け、判断することになります。

そこで問題を考えるに当たっての優先順位(展開順位)を考えてみました。
なお、前提は「現状の参加型構造を維持しての発展」です。
 ※構造とは「金銭の主体が何処にあるか?」とイメージ。
   他の構造としては、興行構造、広告構造、企業育成構造等が上げられます。


 

 




 現在の展開順位もレースによって大きく違う場合もありますし、「発展」に対して「決定的な施策」がある場合、現在の参加型構造が変質する可能性もあり、そうなれば例えば「サポーター」や「二輪関連企業」の意向が上位に上がってきたりもしますので、まったく違う優先順位となるかも知れません。
全ては繋がっていますし、複数の立場を有する事もあります。

特に、「観戦者」はレースへ参加する事となった場合は「既存ライダー」の立場になりますので、あまり観戦者に重きを置くと、既存ライダーの継続困難が生じて参加者総数の減少が起こりえますし、競技色の強いレースに草レースの図式を適応する事は観戦者誘致に逆効果が出る事も多いので、事例個々での判断は必要となってきます。
場合によっては専業企業が消滅してしまう事もありえます。

また、モトチャンプ誌はミニバイクレース唯一の全国的なメディア媒体として、昔とは違い最近では費用対効果が見込めないレース記事掲載と言うボランティア支援を頂いています。
そして影響力は非常に高く、その背負っている歴史とイメージは別枠として論じるべきでしょう。


レーサー育成とミニバイク界

 その他、話題に良く上がる価値観の一つとして「ロードレーサー育成」も上げられます。
この部分は、相互の恩恵に対して、意見の相違が生まれる部分でもあります。
2014年の考察において示したとおり、昨今ミニバイクレースの嗜好者においては「ライフワークスポーツ」としてエンジョイ系の価値観が大多数を占めます。

ですので、スタイル等宣伝効果からの初期導入や、子供や若年層の目標としてロードレースは非常に効果的である為、ミニバイク界も多大な恩恵も受けています。
ミニバイクレースとロードレースは「別の価値を持つ兄弟関係」であり、両者ともに「モーターサイクルを中心」とした文化であり、相互連携は効率的であるとも言えます。

ただ、タミケンの思いとしては、ロードレース界と連携した「大人が目標と出来る夢の道」(motoGPを終着点とするものでなく、ちょっとした未知への扉でも可)を明確に出来れば、更に競技性も高める事が可能であり、競技系の増加にも効果的と考えています。
現状の提示される「夢」は若年層に的を絞った人材育成等の項目が主であり、結局、大人が主体であるミニバイクレース界の発展にそういった夢は好循環する事は少ない要素であり、位置する展開順位は低い事は仕方が無いようです。


タミケン、レギュレーションへのアプローチ!

 上記5者が求める方向性の違いが具体的に現れる事柄と言えば、レギュレーションとレース運営内容です。
このレギュレーションは安全性を向上させるものでもありますし、競技系が求めるイコールコンディションを整え、競技性や機械要素の質を高める重要な仕組みでもあり、方向性を表す決定的な仕組みですので非常に繊細な部分です。

レギュレーションやレース運営に関して、タミケンは過去にも幾度か考える機会がありました。
まず、タミケンが所属するチーム大西塾は1990年代後半から大西塾杯なる手作りレースを開催し、2000年初頭よりキンスポ杯立ち上げに関わっていました。
このキンスポ杯は経営者である田中社長、競技長である武蔵坊杯などの経験があった橋本氏、車検長であるモトショップクラフトの坂本氏、そして大西塾の安田教官が主体となり基礎作りを行い立ち上げ2014年現在も継続して開催されているレースです。
そんな大西塾の一構成員であった為、タミケンは近畿スポーツランド杯運営側とライダー側の中間地点に立ってレースを感じる機会も多く、レースに対しての考えを鍛えてもらいました。
そんな中、2008年のキンスポ杯最終レース終了後、関西マルチ杯運営団体KSR創始者の大垣さんが、参加者減少への対応策として「レースカテゴリの集約を色々模索してるらしい・・・」と小耳に挟みます。
日頃、ライダー側立場だから気が付く「もったいない」と感じる部分などもあり、「現場からの情報発信も必要なのかもしれない」と考える事となり、ライダーとしての思いを込めた下記提案を行いました。

「NSF100のMクラス適応検証」
 ※原島剛さんが正式に検証され、現行マルチ杯車両規則で成立

「APE100系車両をMクラスへ適応の提案」 
 ※APE100にNSF100のキャブ、CRF100マフラー、リアサスの改造可、一部成立 

「FN4とFPクラス統合へ向けた課題点抽出と提案」
 ※10インチを主体とするレース提案

ミニバイクレース界は一車種の生存年数が長い業界です。
当時は車種別と言ってもよいクラス分けがされており、集約への戦力拮抗分析は無かった事もあり、一番勿体無いと思える課題が「NSF、APE系のエンジンがM12クラスで戦えるレギュレーションを作らないといけない」と言う事と「スクータークラスの統合」と考え、結果的に上記3点の検証と提案を行いました。

このレギュレーション要望の提案先はマルチ杯主催団体です。
なぜマルチ杯かと言うと、マルチ杯は自他共に認められる、ミニバイクレース界全体の統合基準として存在しているからです。
結局、クラス統合提案は発展ではなく延命色の強さの為、検証精度にも不足があった為、200名から集めた署名と共に埋もれてしまいました。
なお、検証の為だけに意気込んで準備したオーリンズTTXとナイトロンのリアサスは、報われない意味不明な経費として消えていったりしました(泣)
すでに時期を脱しているかも知れませんが、APE100系の戦力を伴った適応はまだ実現されていませんし、クラス全般に関しても参加者を萎えさせる危険性を含んでいる事案ではあります。

その後、レギュレーションに対して考える機会を得たのが、FP4-STクラスのレギュレーション補足案でした。
FP4-STクラスの起案者であるMデザイン堀川氏と関西スクーター界の重鎮、長谷部氏と打ち合わせしながら、FP4-ST補足レギュレーション22項目案を作り、Mデザイン堀川氏を通じて提案頂きました。
内容は、競技性の高まりつつあるFP4-STクラスのレギュレーションを補足し、見解の相違を回避し、車検での判断を容易にする判断基準にと作ったものです。
しかし、ライダー側の勝手な都合から出る発言として捉えられる事もある事から、冒頭に
22項目の設定に当たり下記の意図説明を行いました。
(FP4-ST立上げ主旨とライダー側意見を元に2014年作成)
方向性を見失わない為、レギュレーションの目的「なぜ?」をテーマ別に層別したもので、「その項目、本当に主旨と合ってる?」と確認作業にも使用し、ライダー側価値観の一例を示すものです。

 大テーマ : 発展と改善
1,既存参加者の継続
2,新規参加者の誘致
3,存在価値の向上

 中テーマ : レギュレーション (上記①②をターゲット)
1,低コスト
2,マシン作成時の技能差解消
3,イコールコンディション

 小テーマ : キーワード
1,低コスト
2,安全
3,明確
4,イコール(性能)
5,手軽

大テーマの既存(ライダー)と新規(観戦者)の順位が、冒頭項目で発展を前提とした物と違います。
これは既存参加者と新規参加者の立ち位置が非常に近いと言うFP4-ST主旨と、既存参加者の脆弱な継続性からなる理由です。
この既存参加者の「継続問題」はスクーターカテゴリだけでなく、地域によっては他のカテゴリにも有りえる大きな課題とも言えます。
土台となる参加者数、カテゴリ、方向性、レース構造、が変わるとするなら、上記の項目も増え、順位も変わって来るでしょう。
ですので、具体的なレース像の方向性を示すレギュレーションは常に変化していくべきと考えますし、冒頭で述べた「現状の新規参加サイクル強化を推し進めながら、新しい価値の模索」は発展に必要で、レギュレーションの変更に関しても関係者は出来るだけ「変化の労」(肉体的、時間的、金銭的)を恐れずに、変化に臨む理解が必要だと思います。
最終的にレギュレーション等方向性の決定は、主催者等の判断となります。
運営に関する決定事項の責は、エントリフィーの減少へと繋がるためにまさに真剣勝負だと思います。
他者は真剣勝負の意味を受け止め、出来る限り協力していくべきでしょう。


最後に

 層別にて半ば強引に分けました5者ですが、その全ての者が「モーターサイクルのレースが好き」と言う、「仲間」と言うに事足りる理由を持ち合わせています。

そして、「レースの素晴らしさ」を感じながら参加している者や関わる仲間は、「どんなスポーツやサブカルチャーにも負けない、モーターサイクルレースの魅力」を感じていると思います。
だったら、その魅力を、自信持ち、その素晴らしさを多くの人に語り伝え、一の巻で述べた「ミニバイクレース界を発展させる、唯一・最強の近道」である「一人が一人を増やす」と言う事が成せれば、絶対に新規参加者は増え、発展は可能です
「少年少女の夢を育む舞台」、「二輪操舵の芸術性を追求出来る舞台」、「機械要素と融合出来る舞台」、「サラリーマンがヒーローになれる舞台」
その他、様々な可能性がミニバイクレースには潜んでいます。

もう無理?
時代が?
無駄?

いやいや、この発展への戦い。
負ける要素は見当たりません!!

近代日本の礎を築いた、工芸品で表現する身近な競争世界。
スポーツ要素としても、芸術要素としても、学習要素としても、人生の糧としても。
大きな存在意義があると言えます。

こんなに素晴らしい要素を含んだミニバイクレース界。
そりゃあなた、絶対発展するしかないでしょう

そんなミニバイクレースの可能性、是非とも、もっともっと、世に知らしめるべきだと思い、微力ながら大西塾一同、2015年も引き続き活動していく所存です。
皆様、今年度も大西塾へのますますの叱咤激励の程、宜しくお願いいたします。

そして、昨今はミニバイクレースを本気で愛する偉大な参加者や、営利を度外視した偉大な関係者、様々な立場の方々が地道な活動を続け、今、業界は支えられています。

そんな活動に追従すべく、2014年春、関東と中部の主にマルチ杯スクーターカテゴリへと参戦しているライダーが集まり、浅倉剛昭氏を長とした選手会が結成されました。
それは、様々なスクーターの可能性に対して、ライダー側現場の意思を適切に伝え、主催者側の負担を軽減し、レースをより魅力的にする為の選手会です。
「頑張れるサイクル」を作りたい、そういった浅倉氏の思いと共に選手一同、ほんの少しですが活動を開始しています。
「モーターサイクルレースが好き」と言う関係者各位仲間な皆様、2015年におきましても助言と助力を宜しくお願いいたします。


最後に、監修頂きました安田教官に感謝いたします。

素敵なオチが降りるといーよ。
タミケンでした!