NomberWeb2012年12月31日

 終わってみればあっという間。そして、次のシーズンが始まるのもあっという間だ。米ツアーは1月から始まるし、欧州ツアーはもうすでに始まってしまっている。過去を振り返ってる場合でない時もあるだろうが、ときには立ち止まって思い返してみることが価値を持つこともある。

 米ツアーでは、年末に公式サイトで「今季のショット・トップ10」という企画を行っていた。さらに、シーズン中にはファンがオンラインで投票できる「プレーヤー・オブ・ザ・マンス(月間MVP)」の企画を、しっかりとスポンサーを付けて実施していた。さすがの試みだと思う。国内女子ツアーではシーズン後の表彰式で「ベストショット」「ベストコメント」という賞などが今年から新設された。日本ツアーでもこうしたものが広まっていくのは歓迎すべきことである。

 今回は勝手に月間MVPを選んでいきながら、あんなことがあったな、こんなことがあったなと1年を思い起こしていきたいと思う。期間は日本ツアーの開幕する3月から、日本ツアーと海外で活躍する日本人選手を対象とした。

【3月】斉藤愛璃──シンデレラガールの登場!

 国内女子ツアーのシーズン初戦はシンデレラガールの登場で幕を開けた。ツアー3年目の斉藤がプレーオフを制してダイキンオーキッドレディスで初優勝。それまではちょっとかわいいプロとして知る人ぞ知る程度の選手だったのが、ここから一躍脚光を浴びる存在となった。

 しかし、実力以上の注目を浴び、周囲からの期待が過熱すれば、平常心でいられるはずはない。「気持ちの面で早く結果を残さなきゃいけないと思った」とあまりに唐突な環境の変化に苦しんだ時期もあった。それでもフィーバーが落ち着いた頃には「取材が減ってきたのもさみしい」と言えるだけの図太い一面も。かわいらしいだけのアイドルゴルファーではないからこそ、まさかの初優勝もたぐり寄せられたのだ。


【4月】松山英樹──悔し涙の「トランスフュージョン」。

【5月】藤本佳則──大卒ルーキーが初のメジャー制覇。

【6月】キム・ヒョージュ──“朴セリ2世”の衝撃。

 今年もやっぱり強かった韓国勢。その中でも一番インパクトが強かったのはサントリーレディスオープンを制したキム・ヒョージュだろう。

 大会当時はまだ16歳のアマチュア。しかも日本ツアー初出場だというのに、ツアー最少ストローク、最年少優勝と記録ずくめの優勝となった。しかも、勢いだけでは勝てない4日間大会での達成だけに、インパクトは余計に大きかった。

 翌月の米欧女子ツアー共催のエビアン・マスターズでもあと少しで優勝という活躍を見せていた。ここでも勝っていれば、日韓欧米全制覇となるところ。いやはや、末恐ろしい……。その後10月にはプロ転向した天才少女。母国では“朴セリの再来”とも騒がれるほどだというが、その才能の深さはどれほどだろうか。

【7月】木戸愛──いぶし銀レスラーの愛娘が初優勝。

 緊張のスタートホール。「頑張れ!」という声と同時に「かわいい!」と声が飛ぶことがある。何となく分かる。健気でまっすぐで、『応援する』よりも『愛でたくなる』ようなキャラクターなのである。中身は意外と頑固者でもあるらしいが、そのあたりは元プロレスラーの父・修さんの影響であろうか。

 これまで既製服を裾上げしたことがないという股下84cmの美脚。たくさんのモデルが会場を彩った新機軸の大会、サマンサタバサ・レディースで初優勝を飾ったのは何かの縁に違いない。今季もっとも進境著しかった選手。

「すごくまっすぐな方ですね。プレーしている姿もカッコよかった。キレイになるための私からのアドバイスなんてないですよ。もう十分キレイじゃないですか」

 表彰式に登場したエビちゃんことモデルの蛯原友里もお墨付きを与えてくれた。

【8月】宮里美香──悲願の米ツアー初優勝!

「米ツアー4年目になるので、自分に厳しく、今年が最後だというつもりでやっていく」

 年頭のウエア契約会見で宮里が掲げた目標は「世界一!!」。まだ米ツアー初優勝も達成していないのに飛躍し過ぎているようにも思えたが、宮里は言葉通りに目標へと邁進していった。

 悲願の米ツアー初優勝はオレゴン州で行なわれたセーフウェー・クラシックだった。優勝争いの中で迎えた11番パー3、ティーショットは打った瞬間に右のクリーク方向へ飛び出した。宮里も「絶対に入る!」と覚悟したが、ボールはクリーク右側の石でぽーんと跳ね、水の上をきれいに飛び越えて左側のラフに着地。8mのパットも決まって「神様がついてるのかな」と優勝を引き寄せる大きなパーセーブとなった。

 日本ツアーを経ずに米国でプロデビューした宮里。ルーキーイヤーから何度も優勝を争い、今季も全米女子プロで惜しくも2位。6月のアーカンソー選手権でも、宮里藍と最終ホールまでもつれる激しい優勝争いの末に惜敗していた。我慢に我慢を重ねてきた宮里に、ようやく勝利の女神が微笑んでくれた瞬間だった。

【9月】フォン・シャンシャン──ボタン事件の犯人は?

 強い選手はただ勝つだけではない。しっかりと伏線を張っているものなのだ。それが意図的かどうかは別にして。

 フォン・シャンシャンがまさかのアクシデントに気づいたのは日本女子オープン2日目のスタート直前だった。どこかに吹き飛んでしまったのか、ズボンのボタンが取れてなくなっている。はてさて、どうしたものか。

 とりあえずベルトをきつく締めて1番のティーショットをやり過ごし、レインウエアにはき替えた。「レインウエアが下がりそうで気になって仕方なかった。前半はめちゃくちゃだった」。後半は届けられた新ズボンに再びはき替えて、首位をキープしたのはさすが実力者である。そして、おもしろエピソードを提供してくれただけでなく、最終的にはきっちりと優勝を飾ったのだった。

 会場は横浜中華街に近い横浜CC。「今までで一番大きな中華街。中国よりも美味しい料理があった」。開幕前からシューマイなどに舌鼓を打って過ごしていたちょっと太めのフォン・シャンシャン。それこそがボタン消失事件の伏線だったのかもしれない。

【10月】青木功、尾崎将司、中嶋常幸──伝説の漫談!?

【11月】石川遼──2年ぶりの優勝でスランプ脱出か。

【12月】藤田寛之──遅咲きの43歳が初の賞金王戴冠。

雨宮圭吾 = 文

http://number.bunshun.jp/articles/-/316999