来季の国内女子プロゴルフ(LPGA)ツアーは、試合数が増え、年間賞金総額は史上最高となることが発表された。選手たちに注目が集まるのはもちろん、景気低迷の下でなお成長を続ける現状に各方面からの関心が高まっている。日本女子プロゴルフの隆盛の裏には、いったい何が隠れているのだろうか。その魅力、そしてそれを生み出す努力とは?


賞金総額は史上最高の31億円余に

 11日に東京都内のホテルで行われた2013年度日本女子プロゴルフ協会のトーナメント開催日程発表。配布された資料を見て、場内の各所で驚きの声が上がった。

 冷え込んだままの経済情勢の中、男子ツアーは実質的な試合数を減らしてしまったが(過去最少の23試合)、女子のレギュラーツアーは1試合増の36試合で、年間賞金総額は過去最高だった08年を上回り、31億3600万円になった。

 また下部のステップ・アップ・ツアーも1試合増えて8試合となる。


シーズン中、「女子」の話題がなくなるのは1週だけ

 来季は7月の第2週と第4週、8月の第1週を除いて、3月の2週目から12月1日まで休みなく国内女子プロトーナメントが開催されることになる。

 さらにいえば、その空き週にはステップ・アップ2大会やプロテストが予定されているため、シーズン中、国内女子ゴルフの話題がなくなるのは、たった1週間の“夏休み”だけだ。

 新規大会は3月29~31日に宮崎・UMKCCで開催される「アクサ・レディース in MIYAZAKI」(賞金総額8000万円)。

 また旧スポンサーの降板で開催が危惧されていた熊本、福岡での大会も、KKTレディース熊本(4月19~21日、熊本空港CC、賞金総額6000万円)、ほけんの窓口レディース(5月17~19日、福岡CC和白C、賞金総額1億2000万円)と名称を変更して存続されることになった。


「ツアー競技の主流を4日間大会に」

 小林浩美LPGA会長も、この盛況ぶりには笑顔を隠せない。


 「厳しい社会環境にもかかわらず、試合数を増加させていただいたことは、私たちへのさらなる期待の表れだと思っています」

 「またゴルフが正式種目として採用される16年のリオデジャネイロ五輪へ向けての応援でもあると感じています。スポンサー、ファン、関係者、メディア……みなさんには感謝してもしきれない。ゴルフと共に社会貢献できる団体として、これからも努力を続けていきたいです」

 さらに来季これまでの5試合から9試合に急増する4日間大会について、「何といっても期待されているのは、国内ツアーの選手が世界の舞台に出てもどんどん勝つようになることだと思う。そうした世界レベルの競争力をつけるため、ツアー競技の主流を4日間大会にしていきたい」と説明。

 「これで来季はマネーランキング対象トーナメントの4分の1が4日間になった。16年には3分の1、18年には2分の1、20年には3分の2を4日間にするのが理想です」と構想を語った。


男子に比べて大きい「費用対効果」

 まさに前途洋々たる機運の漂う発言。なぜ今、これほど国内LPGAが元気なのだろうか。

 大きな理由の1つは、スポンサー企業にとっての「費用対効果」だといわれている。まず男子ツアー競技と比べれば、半額程度の出資でトーナメントが開催できること。賞金額もさることながら、現在は3日間大会が主流で出場人数も少ないため、すべての経費が男子競技ほどにはかからない。

 また、宮里藍や上田桃子らを海外に流出しても、次々に新たな人気選手が生まれ、話題に事欠かないことが挙げられる。


 もちろん男子同様、外国人選手が上位を独占しつつあるのは大きな不安材料だが、何よりスポンサーをつなぎ留めているのはプロアマ大会の評判だ。小林会長も発言の一部で「プロアマ大会の満足度などでも、高い評価をいただいている」と語っていた。


2泊3日のセミナー受講を義務づけ

 前夜祭に始まり、プロアマ大会での女子プロ選手たちの“接客ぶり”が、主催企業の招待客たちを満足させ、ひいては主催企業そのものも満足する、といった図式だ。男子と違ってプロアマ戦では同じティーグラウンドから一緒にプレーできることも、女子ならではの利点になっている。

 ただ、忘れてはいけないのは、その裏側にある、LPGAの選手教育だ。

 現在LPGAでは年に一度、12月に新人とTPD(トーナメントプレイヤーズ・ディビジョン)単年登録者に対して2泊3日のセミナー受講を義務づけている。

 トーナメントプレーヤー会員はプロテスト合格から2回の受講が基本で、ここにはティーチングプロA級を取得してLPGA会員となった人も同時受講する。


「社会人としての作法」などを講習

 今年も12月10~12日、千葉県船橋市内の研修施設で、今夏にプロテスト合格した比嘉真美子や昨年合格の斉藤愛璃、金田久美子、単年登録ではイ・ボミ(韓国)やフォン・シャンシャン(中国)といったツアー優勝経験者までもが、連日約10時間の濃密プログラムで“缶詰め”にされた。

 メニューは時に受講1年目、2年目で基礎編、応用編と内容を分けるなど工夫をこらしたもので、講義内容は「社会人としての作法」「トーナメントのしくみ」「ゴルフルール」「LPGAの歴史」「プロゴルファーと税金」「アンチ・ドーピング」「魅力的なプロゴルファーになるための演出術」などなど。夕食時を利用して「前夜祭などのレセプションマナー」も、たたき込まれる。

 受講2年目の斉藤は「1年目の昨年より、今年こうしてツアーに出てから受講すると、それぞれの重要性が理解できます。より礼儀正しいプレーヤーになりたいと思う」と語っていた。

 また、米メジャーチャンピオンでもあるフォンは、顔を真っ赤にしながらも、着席と起立を美しく演じる“お作法”に挑戦していた。


過去には宮里藍や横峯も…

 過去にこの講習を受けた選手はこんなことを話していた。申ジエ(韓国)は「日本のセミナーは人としてのエチケット&マナーを教えてくれるので、感激です。これからも日本ツアーを大事にしたい」。


 宮里藍は2年目の受講時に「言葉遣いやお辞儀の仕方など、すぐに実践したいことがいっぱいありました。自分のスピーチをビデオ撮影して見る、っていうのもあったんですが、いけないクセが見つかった。言葉を発する前に『えー』をつけることがやたら多かった。去年の研修の時は『すごく』という言葉が多くて気をつけたんですけれど、今度は『えー』です」と、ゴルフの場面だけでは得られない“収穫”を語っていた。

 横峯さくらも「目上の人への応対の仕方とか、すごくためになりました。道具に関しても、講習を聞く前は“打ってみて曲がらなければよかった”んですけれど、少しはクラブの勉強しなきゃと思った。クラフトマンさんとの会話も変わるように努力しないと」と話していた。

 この講習が彼女たちのその後に役立っているのは一目瞭然だ。


新人教育プログラムが隆盛の土台に

 LPGAの新人たちには、このほか日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯でマーカーやスコアボード係、ギャラリー整理などのスタッフ業務を経験する研修もある。

 あるトーナメント会場近くの居酒屋で、ファンのこんな声を聞いた。

 「女子プロゴルファーって、みんな感じいいよなぁ。前夜祭でもすごく気さくに話してくれたり、写真を一緒に撮ってくれたり。立食だったけれど、食べ物、飲み物取ってきてくれたり……。プロアマに出ても、いろいろ熱心にレッスンしてくれたし、会話も楽しかったよ」

 プロツアーは、競技第一であってほしいが、興行でもある。プロアマ大会や前夜祭だけでなく、ファンやメディアに露出される言動にも、繁栄か衰退かのカギは隠されているはず。

 新人教育プログラムが、現在の女子ツアーを支える土台になっていることは間違いなさそうだ。


ゴルフライター 月橋文美 日経Web刊より






さすが月橋さん!

分析が的確ですね・・・・


男子もすぐに取り入れることもあるのでは。。。。