NumberWeb - 2012/7/6 10:30



潮目がそう簡単に変わるはずもなかった。

 7週続いた海外勢の連勝に服部真夕がストップをかけたと思ったら、翌週には全美貞が初日から首位を快走。今季絶好調の強さをまざまざと示して今季2勝目を手にした。

 日、韓、韓、日、日、日、日、日、韓、韓、韓、中、韓、韓、韓、日、韓。

 今季女子ツアーの優勝者を開幕から国別で表すと、ちょっとしたリズムゲームができそうなほど「韓」が目白押しである。ト阿玉や具玉姫が活躍した時代にも海外勢に5連勝、6連勝を許したことはあった。だが、今回は当時のような一人勝ちではなく、毎週のように勝者が違うのが特徴。つまり、それだけ今の海外勢は層が厚い。

 あぁ、また海外勢が勝ち続けるのか。全美貞の優勝を見ていた人がそう感じてしまったとしても不思議ではない。

 だが、そんな風に嘆くのはもうやめにしてもいいのではないか。

外国人勢が席巻する日本ツアーのジレンマとメリット。

「トーナメントを作る側から考えると、二通りの見方ができます。興行的には『うーん……』とうなってしまうけど、マーケティング的にはプラスの側面もあります」

 そう語るのはテレビ解説などでもおなじみ、多くのトーナメント運営に関わる戸張捷氏である。海外選手の流入で女子の試合は韓国や中国で数百万円の放映権料を稼ぎ出すコンテンツになっているという。これは明るい材料だ。

 とはいえ、大会スポンサーにとってそうした広がりがトーナメント開催の第一義ではない。当たり前の話だが日本国内でより多く露出し、多くのギャラリーを集めて大会が盛り上がることが大事なのである。

 戸張氏はジレンマを認めつつこう言う。

「将来的には韓国の企業がタイトルスポンサーになることもあるでしょう。まだなってないのがおかしいぐらい。まあ、今はなかなか空き週がなかったりする事情もありますからね」


女子ゴルフ界では、日本ツアーは米国に比肩する大舞台。

 米女子ツアーはリーマンショックの影響もあって米国内での試合が減少し、アジアやメキシコなど他国での試合が3分の1以上を占めるようになった。

 米本土ではギャラリーの数は決して多くはなく、集客力という点では日本ツアーは世界一の実力を誇る。試合数も米ツアー以上に多く、ギャラリーのマナーや運営体制もしっかりとしている。

 さらに、現在の女子ゴルフ界の主力となっている台湾や韓国の選手にとって本国から地理的に近いのもありがたい。家族を呼んだり、気軽に里帰りできるという点で大きなメリットがあるからだ。

 5月のワールドレディス・サロンパスカップではミシェル・ウィーが日本女子ツアー初参戦した。さらに、9月末の日本女子オープンには世界ランク1位のヤニ・ツェン(台湾)が出場することも決まった。勢いのあるツアーには有力選手が集まってくる。

 欧州でもなく、韓国でもなく、女子ゴルフ界においては日本が米国と肩を並べる世界の2大ツアーになりつつあるのだ。

世界のトップ選手が“メジャー”の日本に押し寄せる!?

 そうなると日米ツアーを掛け持ちするフォン・シャンシャンや朴仁妃のような選手も出てくる。

 5月下旬のヨネックスレディスで優勝したフォン・シャンシャンは、その2週間後に全米女子プロ選手権を制して中国初のメジャーチャンプとなった。'08年全米女子オープン覇者の朴仁妃も、日本で勝った数週後に当たり前の顔で米ツアーでプレーオフを戦っていた。

 日本ツアーに専念し続けているアン・ソンジュ、全美貞や李知姫といったおなじみの顔ぶれも、米ツアーに継続参戦すれば勝つ力は持っているはずだ。

 ならば、おいそれと日本人選手が勝てないのも合点がいく。サッカー選手が欧州リーグで、野球選手がメジャーリーグで戦うのと同じように、日本の女子プロは日本にいながらにして世界最高峰の舞台で、ワールドクラスの選手と対峙しているからである。


世界最高峰の日本ツアーとして、ファンも発想の転換を。

 選手の立場から言えば、優勝できるのはただひとり。海外勢とか日本勢で線引きをしてはいないようだ。

 笠りつ子のように「日本人が勝たんといかん」と声を上げる選手はむしろ少数派。横峯さくらは「周囲の人間よりはマスコミの方に言われることの方が多いですかね。私も頑張ってるんだけどなと思います」とおっとりとしたもの。連勝を止めた服部も「あまり意識してないんですよ。メディアで取り上げられているのを見て初めて知りました。でも同じフィールドで戦っていて、どの選手も一生懸命やっているので、あまり意識はしていません」という。

 有村智恵もこう言っていた。

「私たちは毎試合勝ちたいと思って戦っている。(海外勢に勝つために)何かを変えなきゃいけないのか、このまま頑張り続けた方がいいのかはまだ分からない」

 奮闘する彼女たちを見て思うのは、まず変えるべきは見る側の発想ではないかということ。

 日本人選手のための女子ツアーではなく、世界のトッププレーヤーが集い競い合う場所としての日本女子ツアー。そう考えれば海外勢が席巻する現状にも新たな魅力が見つけられるはず。それが女子ツアーの見巧者とは呼べないだろうか。


雨宮圭吾 = 文









それでも日本人に勝ってほしいよな・・・・