そんな中でも愛海は絵を描いていた。
でも、愛海って、言うだけあって、本当に絵がうまい。
桃花を描いてくれた。
それは見るに耐えない森ガール姿の桃花だった。
「やっぱ、モデルが可愛いと、絵がうまく描ける」
「今なんて言った!」
あまりの形相に愛海は驚いたようだった。
「モデルが可愛いと」
可愛いって、私のこと?
可愛い。なんという心地よい響きなの。
桃花は産まれて初めて、可愛いと言われた。
私が可愛いなんて本当のこと言うんじゃないよ。
「愛海のほうが可愛いよ」
そうなんだ、私って、やっぱり、可愛いんだ。
桃花はもう可愛いの言葉だけで有頂天になっていた。
「桃花って気がついてないでしょ、かなり可愛いわよ」
そう、愛海は言って、その絵を桃花にプレゼントしてくれた。
愛海の絵は本当にほのぼのとしてて、いい絵だ。
確かに絵の中の桃花はそれこそメルヘンの世界に舞い降りた天使のようではないか。
私が天使……。
素敵。愛海には私がこんな風に見えてるのね。
画力も素人目に見てもかなりのものだと思う。
「うまいね、愛海。本当に絵が上手」
そんなことないよ、と愛海は照れていた。
そんな姿がまた可愛い。
「お返しに絵を描いてよ」
愛海はむちゃぶりをする。
どんだけ私が絵がへたか知ってるの?
可愛い愛海が、化け物になるのに。
「描いて、描いて」
無邪気にお願いする愛海。
仕方なく、絵を描いた。
小学生の落書きだ。
「抽象的な絵ね」
愛海はじっと見つめて、そう言った。
「バスキアっぽい」
バスキアって誰?
「イメージと違う絵を描くのね」
下手って正直に言ってよ。
誉められる部分なんて全然ないでしょ。
「センスがあるわ」
愛海は誉めてくれた。
でも桃花は複雑だった。
どう見てもスマップの草薙剛といい勝負だ。