「今読んでいい?」
桃花は読み出してすぐに違和感を感じた。
私の知ってるハチクロと違う。
絵も違う。
内容も違う。
これが「ハチミツとクローバー」だったんだ。
漫画の本を読むと、蒼井優が演じていた花本はぐみの出番が意外と少ない。
主役じゃないの?
脇役?
でも観覧車のシーンを見て、愛海の言うことが正しいような気がした。
漫画の中では葛西臨海公園の大観覧車だが……、船にものったし、まるであの日のデートみたいじゃない。
「漫画の水上バスはもうなくなってるはずだよ」
愛海が言った。
まさかね、だからマリンシャトル?
船のシーンを組み込んだんだろうか……。
それでわざわざ横浜にしたわけ?
そこまで考えててくれたんだ。
ルカの気遣い、優しさ、いろんなところをポイント加算してみた。
でも、気持ちは大樹に傾いてる。
こんだけプラスポイントがルカにはあるのに。
それでも揺らいでしまう。
そんなに大樹が好きなんだろうか。
それともルカが物足りないだけなのか。
「結論でた?」
「ううん」
「そうか、そうだね、でもね、結論は自分の気持ちに正直に問いかけて、決めたほうがいいと思うよ」
「分かってる」
「でもね、私ならルカを選ぶけどね」
愛海は最後にそう言った。
それからも何度となく、大樹と会うようになった。
別に誘ってくるわけでもなく、普通に会うだけだった。
ただ、それはたまにでなく、頻繁に変わっていった。
気がつくと、ルカと一緒にいる時間より、大樹と一緒にいる時間のほうが多くなっていた。
私の気持ちはどっちにあるの?