タイトル「森ガールと盛りあガール」 73 | 可愛い君に愛を囁きたい

「今読んでいい?」

 桃花は読み出してすぐに違和感を感じた。

 私の知ってるハチクロと違う。

 絵も違う。

 内容も違う。

 これが「ハチミツとクローバー」だったんだ。

 漫画の本を読むと、蒼井優が演じていた花本はぐみの出番が意外と少ない。

 主役じゃないの?

 脇役?

 でも観覧車のシーンを見て、愛海の言うことが正しいような気がした。

 漫画の中では葛西臨海公園の大観覧車だが……、船にものったし、まるであの日のデートみたいじゃない。

「漫画の水上バスはもうなくなってるはずだよ」

 愛海が言った。

 まさかね、だからマリンシャトル?

 船のシーンを組み込んだんだろうか……。

 それでわざわざ横浜にしたわけ?

 そこまで考えててくれたんだ。

 ルカの気遣い、優しさ、いろんなところをポイント加算してみた。

 でも、気持ちは大樹に傾いてる。

 こんだけプラスポイントがルカにはあるのに。

 それでも揺らいでしまう。

 そんなに大樹が好きなんだろうか。

 それともルカが物足りないだけなのか。

「結論でた?」

「ううん」

「そうか、そうだね、でもね、結論は自分の気持ちに正直に問いかけて、決めたほうがいいと思うよ」

「分かってる」

「でもね、私ならルカを選ぶけどね」

 愛海は最後にそう言った。


それからも何度となく、大樹と会うようになった。

別に誘ってくるわけでもなく、普通に会うだけだった。

ただ、それはたまにでなく、頻繁に変わっていった。

気がつくと、ルカと一緒にいる時間より、大樹と一緒にいる時間のほうが多くなっていた。

私の気持ちはどっちにあるの?