タイトル「森ガールと盛りあガール」 26 | 可愛い君に愛を囁きたい

「ちょっと……、ひどいじゃないの……」

 低い声。不気味柳下の声。

「ヤッホー」と、田代先輩が柳下の後ろから、明るい声で桃花に挨拶した。

「ああ、信じちゃったんだ……」

 田代は柳下のほうを見て、微笑んだ。

 柳下は真顔で桃花を見下ろしていた。

「さっきの話し、全部、嘘だから……」

 八橋は笑いながら言った。

 嘘……。

「ホラ、部長、笑って」

 柳下は引きつり笑いを浮かべた。

「またやったの、八橋」

「当たり前でしょ。新人歓迎の儀式だから」

 儀式。桃花はやっと事態を把握できた。

「いつもやってるのよ、こいつ。ひどいやつ。いくら柳下部長が不気味だからってねえ」

 どっきりか。このオカマやろう、騙された。

 八橋は満足げに笑ってる。

「さあ、行くわよ、新人歓迎コンパだから」

 田代が桃花に手を差し出した。

「あら、あら、腰抜かしてる、もしかして?」

「怖すぎるよ、部長」

 ダンベルを上げ下げしながら、羽田が肩を貸して、やっと、桃花は立ち上がった。

 飲み会は盛り上った。

 改めて読モとして、田代先輩を見ると、さらに素敵女子に見えてしまう。

 普通に読モが隣にいるなんて、やっぱ、東京だ。

 ちょっと酔いが回ってくると、オカマやろうが気になりだした。

 私をドッキリに引っ掛けるたあー、何様だ。

 気持ち悪いんだよ、てめえ。

 幽霊が苦手だなんて、情けない。

 ゴキブリも蛇もジェットコースターも大丈夫なのに。

「でも幽霊怖がるなんて、可愛かったよ」

 八橋はそう言って、笑った。

 可愛い……。私が可愛い。

 おかまに言われてもいい響きだ。

 まあ、可愛いなら仕方ない。

 幽霊怖がるのが、可愛いのか……。

 桃花は急に顔がほころびを失い、ニヤけていくのを止められなかった。

「てことは部活を止めても3日後に死なないってこと?」

「当たり前じゃないの」

「じゃあ、止める」

 桃花はベロベロになって、そう叫んだ。