タイトル「森ガールと盛りあガール」 25 | 可愛い君に愛を囁きたい

 どうしよう、田代先輩は捨てがたい。

 でもあの部活はかなりヤバイよ。

 大体、なんで幽霊がいるのよ。

 ヤンキーは平気だけど、幽霊は別よ。

 お化け屋敷だって入ったことないのに。

 ホラー映画も見ないようにしてるし……。

 マンションに戻ると、取り敢えず塩を部屋中にまいた。

 玄関に盛り塩をし、やっぱ無理。

 あの部活は無理だ。

 田代先輩は捨てがたいけど、幽霊は無理。

テレビをつけて、大きな音を出した。

 そしてすぐベットに潜り込んだ。

 こういう時は寝るしかない。

 まだ夕方だけど、寝る。

 バラエティを見ても、笑えない。

 なんか心のどこかに引っかかってる。

 と、八時過ぎ、非通知の電話がかかってきた。

 ボソボソと、何かを喋ってる。

 遠くに水がポタリポタリと落ちる音がする。

「わ・た・し……、部長の……、柳下……です……」

 部長って、思わず、桃花は携帯を切った。

 幽霊よ、幽霊から電話がかかってきた。

 どうしよう。

「それとね、部長が話しかけたら、無視しないほうがいいわよ、そうしないと何が起きても知らないからね」

 八橋先輩にそう言われたことを思い出した。

 突然、壁にかけていた絵が落ちた。

 ひいー、これってヤバイ方のやつじゃん。

 と、電話が鳴った。

 非通知。

 おそるおそる電話に出た。

 震える声で、遠い声がする。

「部長の……、柳下です……」

 またかかってきた。

「今マンションの前まで来てるから」

 えっ、部屋の前まで来てるって。

 ピンポーンと呼び鈴が鳴る。

 ちょっと、怖い。

 マジ、怖すぎるって。

 ガチャ、がちゃ、ガチャとドアノブをまわす音。

 来ないでよ。

 ドアノブの音がやむ。

 再び電話の着信。

 窓の外に着物姿の柳下。

 ギャー……、叫んだ声が出ていない。

 窓をドンドンと叩く柳下。

 怖くなって、桃花は表に出ようと、玄関へむかう。

 そして鍵を開け、外へ飛び出した。

 すると、そこに柳下が立っていた。

 思わず、桃花は腰を抜かした。

 あわわわわ……、声にならないとはこのことだ。

 助けを呼ぶ声も出ない。