どうしよう、田代先輩は捨てがたい。
でもあの部活はかなりヤバイよ。
大体、なんで幽霊がいるのよ。
ヤンキーは平気だけど、幽霊は別よ。
お化け屋敷だって入ったことないのに。
ホラー映画も見ないようにしてるし……。
マンションに戻ると、取り敢えず塩を部屋中にまいた。
玄関に盛り塩をし、やっぱ無理。
あの部活は無理だ。
田代先輩は捨てがたいけど、幽霊は無理。
テレビをつけて、大きな音を出した。
そしてすぐベットに潜り込んだ。
こういう時は寝るしかない。
まだ夕方だけど、寝る。
バラエティを見ても、笑えない。
なんか心のどこかに引っかかってる。
と、八時過ぎ、非通知の電話がかかってきた。
ボソボソと、何かを喋ってる。
遠くに水がポタリポタリと落ちる音がする。
「わ・た・し……、部長の……、柳下……です……」
部長って、思わず、桃花は携帯を切った。
幽霊よ、幽霊から電話がかかってきた。
どうしよう。
「それとね、部長が話しかけたら、無視しないほうがいいわよ、そうしないと何が起きても知らないからね」
八橋先輩にそう言われたことを思い出した。
突然、壁にかけていた絵が落ちた。
ひいー、これってヤバイ方のやつじゃん。
と、電話が鳴った。
非通知。
おそるおそる電話に出た。
震える声で、遠い声がする。
「部長の……、柳下です……」
またかかってきた。
「今マンションの前まで来てるから」
えっ、部屋の前まで来てるって。
ピンポーンと呼び鈴が鳴る。
ちょっと、怖い。
マジ、怖すぎるって。
ガチャ、がちゃ、ガチャとドアノブをまわす音。
来ないでよ。
ドアノブの音がやむ。
再び電話の着信。
窓の外に着物姿の柳下。
ギャー……、叫んだ声が出ていない。
窓をドンドンと叩く柳下。
怖くなって、桃花は表に出ようと、玄関へむかう。
そして鍵を開け、外へ飛び出した。
すると、そこに柳下が立っていた。
思わず、桃花は腰を抜かした。
あわわわわ……、声にならないとはこのことだ。
助けを呼ぶ声も出ない。