ライブハウスが会場になると、続々と客が入ってきた。
そして愛海も蘭子たちに周りをガードされて現れた。
愛海がふと足を止めた。
「お父さん」
若菜はなんでもないように、愛海のチケットを手にとり、半券を手渡した。
「何してるの、こんなとこで」
「このライブハウスの経営者なんだ」
愛海は父親の仕事を聞かされてはいなかった。
それでもオカマバーか何かだと思っていた。
「オカマやめたの?」
そう言いつつ、愛海は若菜のばっちりメイクには気がついた。
「やめてないよ」
「じゃあ、なんでそんな格好してるの?」
「お前が来るっていうからさ」
「私が来るって……、どうして知ってるわけ」
「それは」
「桃花ね、そんなかっこうして、私を騙す気でしょ」
桃花が後ろから現れた。
「会いたいんだって、愛海に……」
「やめてよね、こんなオカマ、会いたくないわよ」
「でも父親じゃないの」
「私、帰る」
さっと、蘭子たちが愛海の道を塞いだ。
「ちょっと……」
「見てってよ、私のステージ……。愛海に見てほしいからさ」
それでも帰ろうとする愛海を蘭子たちが遮る。
「分かったわよ、でも、この変態近づけないでしょ」
愛海は若菜を指差した。
そして愛海は会場に消えた。
桃花は肩を落とした若菜の肩をそっと叩いた。
「ごめん、こんなことになるって思わなくて」