タイトル「森ガールと盛りあガール」 139 | 可愛い君に愛を囁きたい

 ライブハウスが会場になると、続々と客が入ってきた。

 そして愛海も蘭子たちに周りをガードされて現れた。

 愛海がふと足を止めた。

「お父さん」

 若菜はなんでもないように、愛海のチケットを手にとり、半券を手渡した。

「何してるの、こんなとこで」

「このライブハウスの経営者なんだ」

愛海は父親の仕事を聞かされてはいなかった。

それでもオカマバーか何かだと思っていた。

「オカマやめたの?」

 そう言いつつ、愛海は若菜のばっちりメイクには気がついた。

「やめてないよ」

「じゃあ、なんでそんな格好してるの?」

「お前が来るっていうからさ」

「私が来るって……、どうして知ってるわけ」

「それは」

「桃花ね、そんなかっこうして、私を騙す気でしょ」

 桃花が後ろから現れた。

「会いたいんだって、愛海に……」

「やめてよね、こんなオカマ、会いたくないわよ」

「でも父親じゃないの」

「私、帰る」

 さっと、蘭子たちが愛海の道を塞いだ。

「ちょっと……」

「見てってよ、私のステージ……。愛海に見てほしいからさ」

 それでも帰ろうとする愛海を蘭子たちが遮る。

「分かったわよ、でも、この変態近づけないでしょ」

 愛海は若菜を指差した。

 そして愛海は会場に消えた。

 桃花は肩を落とした若菜の肩をそっと叩いた。

「ごめん、こんなことになるって思わなくて」