桃花がライブを終えて、外に出ると、ルカが立っていた。
ルカは桃花を見ると、いきなり泣き出した。
おい、おい。泣くなよ。
キャバ嬢のアケビちゃんが店を変わって、連絡が取れなくなったらしい。
貢いだ額、五百万円以上。
傷心を癒しにきたんなら、私のところに来るのは間違ってる。
「何やってんの。分かってるじゃない、キャバ嬢なんだから、あんたの金目当てに決まってるでしょ」
「本気で好きだったのに」
ああ、真面目な男だ。
騙されてもまだ恋してるなんて。
「本当に女見る目ないな」
そう言いながら、そんな男が選んだ相手が自分だったことを思い出した。
つまり、私って、あのキャバ嬢と同レベルってわけ?
とにかく、その日は、仕方ないので、桃花は自分の部屋にルカを泊めることにした。
またルカがこの部屋に来ようとは思わなかった。
「あの女、元ヤンだったんだ」
「怖かったんだ?」
「そう、追いかけると、何度も蹴りいれられた」
なんてバカ、こんな男のどこがいいんだろう。
弱くって、弱くって、情けなくて、イケメン以外何の取り柄もないじゃない。
生活力ゼロ。
ああ、今私の腕の中で泣き続けるこのダメ男。
そんなダメ男を、やっぱり好きだなんて。
ああ、困ったもんだ。
「ねえ、もう一度やり直そうよ」
ルカは顔を上げて、桃花の目を見つめながら、そう言った。
「ヤンキーは苦手じゃなかったっけ」
「だって、ヘビメタとヤンキーは違うだろ」
「そうね。それはそうよ」
「じゃあもう一度付き合わない」
桃花は少し考えた。
でも、気持ちはすでに受け入れていた。
「やっぱ、桃花が一番好きだから」
ああ、こんな男のどこがいいんだろう。
ルカは桃花にキスをした。
溶けてしまいそうだった。
いろんなことがとろけて流れ出してしまう。
結局最後に残った言葉は、「好き」という気持ちだけだった。
やっぱ、好き。
理由なんてどうでもいいじゃない。
だって好きなんだから、それが一番だって。
ルカにキスされると幸せなんだから。
それにこれでついに決着ついたじゃない。
森ガールにも、盛りガールにも勝ったじゃない。