「私はあんたのためにキャバ嬢なんかなんないからね」
「何言ってるの」
本当、何言ってるんだろう。
私、ルカ好みの女になろうと、キャバ嬢になろうとしてた。
馬鹿な。
そんなことできるわけないでしょ。
やっと自分らしくヘビメタしてるのに。
夜の蝶になれるわけないじゃない。
そんな価値のある男。
こんなキャバクラ狂いするような男。
「とにかく、僕は今、アケビちゃんに夢中なんだから。本気で恋してるんだ。いくら大樹にふられたからって、戻ってきても桃花の居場所なんか無いからね」
何、今の。
もしかして私、またフラれた?
あんな女のせいで二度もフラれたわけ……。
畜生、またモリガールか。
憎きモリガール。
騙されたらいいんだ。
貢だけ貢いで借金つくったらいいんだ。
「どんどん不気味になっていくな」
俺らのめざすバンドって、ここまでアングラだったっけ。
桃花は憎しみを歌にこめた。
ギターを何本追っただろう。
火をつけて、投げつけただろう。
みんな、火祭りにしてやる。
魔女狩りだ。
ライブハウスは異様な雰囲気になっていた。
音楽までも迷走しだしていた。
森ガールも、盛りガールもまとめて血祭りだ。