タイトル 「天使の羽」 10 | 可愛い君に愛を囁きたい

「ねえ、沙希は大丈夫なの」

 これで、20回目。

 みさきは同じことばかり聞く


 奈菜のことが面倒くさくなっていた。

 うるさいと叫びたかった。

 事故を起こしたのはあんたでしょ。

 なるようにしかなんないのよ。

「今、いろいろ手を尽くしてますので」

 安定剤でも飲ませて静かにさせたかった。

「おとなしく待合室でお待ちください」

 突き放すような言い方をしてる。

 みさきはそれに気がついていたが、


 抑えることができなかった。

 奈菜はずっと泣いていた。

 みさきは人前で泣いたことがない。

 そのせいか、ところかまわず涙する人を見ると、


 その弱さにムカついてしまう。

「先生は私のことを心配してくれないの」

 と、看護婦が診察室に現れた。

 警察が事故の事情聴取を行うために


 奈菜を呼びにきたのだ。

 みさきはやっと開放された気分だった。

 みさきと看護婦は苦笑いをした。