「ねえ、沙希は大丈夫なの」
これで、20回目。
みさきは同じことばかり聞く
奈菜のことが面倒くさくなっていた。
うるさいと叫びたかった。
事故を起こしたのはあんたでしょ。
なるようにしかなんないのよ。
「今、いろいろ手を尽くしてますので」
安定剤でも飲ませて静かにさせたかった。
「おとなしく待合室でお待ちください」
突き放すような言い方をしてる。
みさきはそれに気がついていたが、
抑えることができなかった。
奈菜はずっと泣いていた。
みさきは人前で泣いたことがない。
そのせいか、ところかまわず涙する人を見ると、
その弱さにムカついてしまう。
「先生は私のことを心配してくれないの」
と、看護婦が診察室に現れた。
警察が事故の事情聴取を行うために
奈菜を呼びにきたのだ。
みさきはやっと開放された気分だった。
みさきと看護婦は苦笑いをした。