タイトル 「さより」1 | 可愛い君に愛を囁きたい

 テレビを見てると、タレントのTが三十五歳以上になってくると、同窓会に女子を呼ばない方がいいと話してる。

 三十五過ぎると、夢が壊れるかららしい。

 なるほどそうかもしれないなあ……。

 Tの側に四十路前の女子アナが苦笑いを浮かべてる。

 それに気付かず「そうそう二十歳位の同窓会はびっくりするよな」と盛り上る。

 二十代の同窓会。

あれは成人式の後だっけ。

学生時代垢抜けなかったあの子が、きれいになっててビックリするって。

 いわゆる同窓会シンドロームだな。

 僕にもそんな経験がある。

 中学時代はいつも教室の隅にいて、下手すると一日誰とも口をきいてないんじゃないだろうかという子がいた。

 その子がどこの高校に行って、今、大学生なのか、社会人なのかも知らなかった。

 その子がいきなりキラびやかに着飾って、同窓会に現れたとき、みんなが驚きの声を上げた。

 そうだ、誰もがその子が隣に座るたびに

「変わったね」

「変わったよね」

と、同じ言葉をかけた。

 楽しくなかったのか、しばらくみんなの周りをぐるぐると回って、挨拶したあと、すぐに帰ってしまった。

 あの時の印象は衝撃的だった。

 けしてブサイクだったわけじゃない。

 きれいだったわけでもない。

 大人しい壁の花。

 だからいじめられるわけでもなく、みんなからチヤホヤされるわけでもなかった。

 ただあまりにも根暗すぎて近寄りがたかった。

 だが今のその子は派手すぎて、近寄りがたい。

 一体、中学を卒業して、高校時代に何があったんだろう。

 そう、高校デビューなのか、最近になって変わったのか。

 どっちにしても、そんな男と付き合ったからだろう。

 それからその子とは会っていない。

 そもそも興味があったわけでもない。

 ただあまりに変わりすぎててショックを受けただけだ。

 そうだ、その子の名前覚えてない。

 なんて名前だっけ。

 聞けば良かったな。

 たしか頭文字はSかY。