隆平はチラチラと乃亜を見てる。
ボールがまわってきても、すぐにボールを奪われてしまう。
ボールをはじかれて、オタオタしてる。
ドリブルだって、不恰好。
チョー、ヘタくそ。
それも飛びっきりのドンくささ。
乃亜は何であんなのがいいんだろう。
ココロの理解を超えていた。
補欠にならないのが不思議だ。
まあ、部員がいないせいもあるだろう。
にしたって、ヘタすぎるでしょ。
対抗戦の相手もがっかりするぐらいの弱小チーム。
そんなチームを必死で応援している乃亜って、何。
こんなに可愛い子が、
こんな弱っちいチームを応援すりゃ、
相手のチームだって驚くでしょ。
相手のチームは少しでも乃亜にいいところを見せようと、
スタンドプレーを繰り出してる。
みんな、乃亜目当てじゃない。
なのに乃亜ったら、あんなダサダサ男子のどこがいいの。
隆平のやつ、前を塞がれて身動き取れなくなってる。
せっぱつまっての大遠投。
ぜんぜんリングまで届かないじゃない。
ダサすぎ。
かっこ悪い。
ガードされて、ダブルドリブル。
挙句は遠投。
これが漫画かなんかなら、
3ポイントシュートになるところよ。
でも球は届かない。
かっこ悪い。
こんなヘッポコゲームって、実際あるんだ。
試合は100点以上の大差がついた。
ドラマやアニメじゃ、絶対に見られないくそゲーム。
どうしてこんな試合を、
相手のチームは受けてくれるのだろう。
弱いにもほどがある。
これじゃ、女子と戦ったって、きっと負ける。
「どうして相手のチームがこの試合をうけるかって?」
乃亜はココロの疑問にあっさり答えてくれた。
「それは隼人がいるからよ」
「隼人?!」
そうか、そうだったのか。
相手のチームは
全国区の『宇津木隼人』の名前に惹かれてるのだ。
隼人とゲームができるなら。
そう思って、試合をしにわざわざ遠征してくるのだ。
「で、隼人は試合には出てない……」
すごい詐欺だ。
ココロは相手チームが気の毒になった。
「ひどくない?」
「ひどいよね」
こんなに弱いって分かってたら、
わざわざ遠征してこないよ。
「でも関係なくない。勘違いした相手が悪いんだって」
「それってないでしょ……、ありえないって」
隼人目当てに県外からも遠征してきているのに。
「確かにそうね」
乃亜が急に考え込んだ。
そして何か決意したかのようにうなづいた。
「そしたら隆平も喜ぶよね」
幼馴染だから分かる。
乃亜は何か企んでるって。