恋するリバウンド 6 | 可愛い君に愛を囁きたい

隆平はチラチラと乃亜を見てる。

ボールがまわってきても、すぐにボールを奪われてしまう。

ボールをはじかれて、オタオタしてる。

ドリブルだって、不恰好。

チョー、ヘタくそ。

それも飛びっきりのドンくささ。

乃亜は何であんなのがいいんだろう。

ココロの理解を超えていた。

補欠にならないのが不思議だ。

まあ、部員がいないせいもあるだろう。

にしたって、ヘタすぎるでしょ。

対抗戦の相手もがっかりするぐらいの弱小チーム。

そんなチームを必死で応援している乃亜って、何。

こんなに可愛い子が、

こんな弱っちいチームを応援すりゃ、

相手のチームだって驚くでしょ。

相手のチームは少しでも乃亜にいいところを見せようと、

スタンドプレーを繰り出してる。

みんな、乃亜目当てじゃない。

なのに乃亜ったら、あんなダサダサ男子のどこがいいの。

隆平のやつ、前を塞がれて身動き取れなくなってる。

せっぱつまっての大遠投。

ぜんぜんリングまで届かないじゃない。

ダサすぎ。

かっこ悪い。

ガードされて、ダブルドリブル。

挙句は遠投。

これが漫画かなんかなら、

3ポイントシュートになるところよ。

でも球は届かない。

かっこ悪い。

こんなヘッポコゲームって、実際あるんだ。

試合は100点以上の大差がついた。

ドラマやアニメじゃ、絶対に見られないくそゲーム。

どうしてこんな試合を、

相手のチームは受けてくれるのだろう。

弱いにもほどがある。

これじゃ、女子と戦ったって、きっと負ける。

「どうして相手のチームがこの試合をうけるかって?」

乃亜はココロの疑問にあっさり答えてくれた。

「それは隼人がいるからよ」

「隼人?!」

そうか、そうだったのか。

相手のチームは

全国区の『宇津木隼人』の名前に惹かれてるのだ。

隼人とゲームができるなら。

そう思って、試合をしにわざわざ遠征してくるのだ。

「で、隼人は試合には出てない……」

すごい詐欺だ。

ココロは相手チームが気の毒になった。

「ひどくない?」

「ひどいよね」

こんなに弱いって分かってたら、

わざわざ遠征してこないよ。

「でも関係なくない。勘違いした相手が悪いんだって」

「それってないでしょ……、ありえないって」

隼人目当てに県外からも遠征してきているのに。

「確かにそうね」

乃亜が急に考え込んだ。

そして何か決意したかのようにうなづいた。

「そしたら隆平も喜ぶよね」

幼馴染だから分かる。

乃亜は何か企んでるって。