恋するリバウンド 4 | 可愛い君に愛を囁きたい

「もっと新しい漫画読みなよ」

『あしたのジョー』は、パパの愛読書らしいけど……。

「はじめの一歩じゃダメなわけ?」

「『はじめの一歩』は絶対ダメ」

「どうして?」

「だって、主人公の名前が幕の内よ」

「まさか……」

「弁当、思い出すでしょ」

「やっぱ、そんな理由か」

「ダイエットは気合なのよ。

気持ちが折れるようなことは一切NGよ」


「恋は命がけよ。

命をかけれない恋愛なんて、恋じゃないわ」

「名言ね」

恋をするたびに死にもの狂いね。

「恋は人を詩人に変えるって、ねっ」

乃亜は浮かれてる。

でも詩人というより、廃人だ。

目の周り、クマがすご過ぎる。

まあいつものことだから、気にはしてないけど。

恋をするといつだって、

乃亜はアッという間にダイエットに成功する。

「まさに恋の力はミラクルよ」

乃亜は新しい獲物をすでにロックオンしてる。

それより何より、一番の問題は私だ。

私自身が心配なのだ。

乃亜が恋をすると、

ココロはいつも落ち込んでしまう。

急に甘い物をやめられる?

私は乃亜が失恋して、いつも共太り。

すっかり乃亜のおかげで

体質改善が進んでしまう。

だけど痩せる時は乃亜だけが痩せていく。

私はミニブタのままじゃない。

また、乃亜の引き立て役。

そうよ、乃亜は恋多き女。

しかも美人。

そう、痩せてさえいれば、

狙った相手はすぐおちる。

でも美人じゃない私は……。

恋なんて始まりさえしない……。

乃亜のおかげで、体重55キロ。

手遅れ状態。

私は乃亜と違って、背も低い。

ココロは158センチ。

乃亜は165センチ。

だから乃亜より体重を落とさないといけない。

早く40キロ台に戻さなきゃ。

49キロがココロの引いたボーダーライン。

でも甘い誘惑には勝てないわ。

乃亜がダイエットで肌荒れしても、

ココロの肌は脂ぎってる。

ダメよ、ダメダメ。

その一口がデブのもと。

わかってるけど、手が伸びる。

ダイエットは明日から始めるよ。

目の前のスイーツを食べていいでしょ。

「ダメよ、ダメダメ」

そう言って乃亜は

キスをせまる男の甘い誘いと戦ってるかも。

なのに私は甘いキスの代わりの

ケーキに攻め落とされる。

ああ、なんて私の欲望は食欲重視なの。

反省。反省。でもいいじゃない。

だって私はスイーツに恋してるんだから。