タイトル「森ガールと盛りあガール」 38 | 可愛い君に愛を囁きたい

「違った、チェルシーホテルと間違った」

「チェルシーホテル?」

 やばい、シド・ビシャスなんて森ガールは知らないよ……。

 シドってグループが売れてるけど、シドも森ガールっぽくないよね。

この話はここでやめないと、メッキがはげる。

セックス・ピストルズは二度と聞かないと誓ったんだ。

「永ちゃんって、矢沢永吉だろ。よく知ってるね」

「お父さんが……」

 思わず桃花はそう誤魔化した。

「そっか、なんだ、元彼が聞いてたのかと思ったよ」

その時、ルカの頭の中では、いろんな考えが巡り巡っていた。

少し大人しめのお淑やか系女子が、意外とヤンキーと付き合っていく現実をいっぱい見てきたからだ。

ヤンキー体質の男子は、その強引さで、クラスでも人気者の女子をあっという間にさらっていってしまう。

見ているだけでウジウジしている男子は、それを嫌々受け入れなければいけない。

現実に街を歩いてると、なんでと思うカップルに遭遇する。

ヤンキー系の男子が、ブリブリの女子なんかとラブラブだったりする姿を見るたびに、ああ、押しの弱い子だから、きっと押し切られたんだなと思ってしまう。

もしかしたら、桃花もヤンキーに押し切られ、元彼が矢沢好きだったのかもしれないと、考えていた。

それだけにお父さんが好きだったと聞いて少しだけホッとした。

しかし、お父さんがヤンキーなんだという新たなる心配がうまれてしまった。

とにかく、目の前の桃花はルカの理想に限りなく近い森ガールなのだ。

ヤンキーが森ガールを産んだっていいじゃないか。

トンビが鷹を産むって、こういうことを言うんだろう、きっと。