「ガンズ最高」って、「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」をいきなり弾き語ったりしてさ。
「私もよ」
そのセリフがこぼれた時、愛の告白だって思わなかったの。
「私も好き、ヘビメタ」
その裏に、私も大樹のこと好きなんだって、気がつかなかったわけ。
それにタトゥーよ、タトゥー。
タトゥーのハートに矢が刺さってたでしょ。
大樹の射ち込んだ矢じゃないの。
気づいてないなら、鈍感すぎるでしょ。
「確かに好きって、告ったりしなかったよ。でも見せびらかしたでしょ、私のタトゥー。普通気づくでしょ」
あんなに好きだったのに。
バカ、鈍感。
私が天然みたいじゃないの。
結局全ての想いを桃花は胸にしまいこんだ。
口にしたかった言葉は、本当はまったく伝わっていなかったのだ。
こうして桃花の恋は実ることはなかった。
桃花が告白して、三日後に、
「メンバー間で恋愛するとギスギスするだろ」
そう言って、大樹は去っていった。
文化祭の前にバンドのメンバーを抜けたのだ。
さらに……。
「なんか、お前といると疲れるんだよね」
そんな捨て台詞をはいて、部活からもいなくなった。
気まずいにもほどがあるじゃないの。
結局逃げたんだ。
私と顔を合わせたくないから、逃げ出したんだ。
その時はそう思って、ほんと、落ち込んだわ。
告ったりしなきゃ良かったって、思ったわ。
でもそれはきっかけに過ぎないって分かった。
だってあれほど愛していたメタルまで、大樹は捨てたからだ。
突然、アコギに持ち替えて、フォークソングを歌い始めた。
大樹はフォークソング同好会に再入部した。
「なんでフォークなわけ」
教室で問い詰めると、悪びれることもなく、大樹は言い放った。
「俺が目指してるのは、これなんだよね」
そしてフォーク愛を語り始めた。