大体、あいつが私のことをフルからいけないんだってえの。
私の何が不満なわけ。
そこらのブスより、かなりイケてるじゃない。
ああ、嫌な思い出だ。
高校時代一番の汚点だ。
桃花は高2の時一度だけ、告ったことがある。
同じクラスのバンドメンバーの黒岩大樹。
「ねえ、大樹、私たちってさ、イケてるもん同士、付き合わない?」
大樹は一言、「なんで?」と首をかしげた。
なんでって何よ。
まさか、私の気持ちに気がついてなかったわけ。
「だから……、好きだって……」
大樹は桃花の言葉を遮り、続けた。
「お前、女に見えないんだよね。男みたいだし」
何何……、意味分からない。
自信がなきゃ、告ったりしないわよ。
「何を勘違いしてるか知んないけどさ。お前だけは有り得ないから」
大樹が思わせぶりな態度をとったからだろう。
本当はそう言いたかった。
「お前の指ってきれいだな」と手を握ったでしょ。
「ビンビンくるねえー」と私に体を寄せてきたじゃない。
「俺たちって愛称ばっちりだな」なんて言ったじゃない。
あの言葉はすべてギターのテクニックのことだったりしたわけ?
私の勘違い?
「お前の勘違いだな。俺はお前を女だって思ったことないし」
大樹は平然と桃花の夢を断ち切った。
ずっと好きだったのに。
そうよ、大樹は気がついてないかもしんないけどさ。
入学式の日に大樹見て、ビビッときたんだから。
かっこいいって思ったんだよ。
光ってたよね。
入学式の日から、ギターを背負ってたじゃない。
軽音楽部に入学したって聞いて、すぐ入部したんだから。
そうよ、片思いだったんなら、私の行動って、かなりなストーカーじゃないの。
ヘビメタ好きって知った時のトキメキ。
運命さえ感じたのに。