タイトル「森ガールと盛りあガール」 13 | 可愛い君に愛を囁きたい

森ガール。

それは僕が出会った理想の女子像だ。

僕は理想の女子像を追い求めてきて、ついに出会った気がした。

それは恋に臆病になってしまって踏み出せない僕のために、そこに待っててくれたような女性である。

今津ルカには過去の恋愛のせいで、恋に臆病になっていた。

付き合った相手はクラスのヤンキーで、校舎の裏に呼び出されて、一面、不良に囲まれて、「こいつが、お前と付きあいたいって言ってるんだ」とおよそ、胸キュンとするようなドキドキとは程遠い、威圧によるドキドキの末、恋愛を受け入れざる終えなくなった過去があった。

彼女は恋愛をしても可愛さのかけらもなく、対等の関係と言うより、彼女の顔色を伺いながらの恋愛を強要された。

くちびるも奪われた。

そうだ、強引にファーストキスを奪われたのだ。

そして思わず押しのけたせいで、ビンタをされた。

浦山来夢。

来る夢と書いて、らいむと読むらしい、名前だけは可愛い。

親がヤンキーだから、そんな名前をつけたのだろう。

ラムちゃん、ラムちゃんと呼ばれてた。

どこがラムちゃんだ。

本当の鬼じゃないか。

特攻服の背中に鬼面を描いてて、「どうだ、本当のラムちゃんみたいだろ」って自慢してたっけ。

単車の後ろにしがみついて、ドライブなんて言ってたけど、ジェットコースターより怖かった。

道路はまっすぐ走るものだ。

右へ左へ蛇行するもんじゃない。

そんな地獄の日々がしばらく続いたある日、

「おめえといても少しもトキめかねえー」

そう言って来夢は僕をふった。

フラれた時、思わず嬉しくて涙が出た。

「なんだ、泣いてんのか、男のくせに」

 ラムはルカの頭を撫でながら、

「しょうがねえんだ。周りの連中がおめえと歩いてると、なんだ、あの軟弱やろうっていうからさ」と慰めている。

 涙を誤解してる。

 嬉しくて泣いてるのに、フラれて落ち込んでると思ってる。

 こんな鬼でも少しは気が咎めたりするんだろうか?

「気持ちはあるにはあるんだけどさ、まあ、おめえといると、かっこ悪いだろ」

 さっきからずっとけなされているのに、嬉しくて仕方ない。

「だから、フルことにしたから」

と、来夢は実に身勝手な理由を並び立てた。

 もし、本当に好きだったら、そんな理屈、納得いかないのだろうが、全面承諾だった。

 居酒屋のように、喜んでと叫びたい気分だった。

「そんなに好きだったんだ、罪な女だったんだな」

 来夢はニヤとした。

「まあ、諦めろや、おめえといても楽しくないんだ」

 そう言って、ルカの両肩を来夢はがっちり押さえた。

「最後にキスしてやる!だからもう忘れろ」

 そう言って、来夢はルカのくちびるを奪った。

 それは長い長いキスだった。

 息が続かなくて、苦しかった。

それでも拘束をとかれた気がした。

「明日から自由だ」そう叫びたかった。

今でもそれがトラウマになっている。

だからもう二度と失敗はしたくない。