森ガール。
それは僕が出会った理想の女子像だ。
僕は理想の女子像を追い求めてきて、ついに出会った気がした。
それは恋に臆病になってしまって踏み出せない僕のために、そこに待っててくれたような女性である。
今津ルカには過去の恋愛のせいで、恋に臆病になっていた。
付き合った相手はクラスのヤンキーで、校舎の裏に呼び出されて、一面、不良に囲まれて、「こいつが、お前と付きあいたいって言ってるんだ」とおよそ、胸キュンとするようなドキドキとは程遠い、威圧によるドキドキの末、恋愛を受け入れざる終えなくなった過去があった。
彼女は恋愛をしても可愛さのかけらもなく、対等の関係と言うより、彼女の顔色を伺いながらの恋愛を強要された。
くちびるも奪われた。
そうだ、強引にファーストキスを奪われたのだ。
そして思わず押しのけたせいで、ビンタをされた。
浦山来夢。
来る夢と書いて、らいむと読むらしい、名前だけは可愛い。
親がヤンキーだから、そんな名前をつけたのだろう。
ラムちゃん、ラムちゃんと呼ばれてた。
どこがラムちゃんだ。
本当の鬼じゃないか。
特攻服の背中に鬼面を描いてて、「どうだ、本当のラムちゃんみたいだろ」って自慢してたっけ。
単車の後ろにしがみついて、ドライブなんて言ってたけど、ジェットコースターより怖かった。
道路はまっすぐ走るものだ。
右へ左へ蛇行するもんじゃない。
そんな地獄の日々がしばらく続いたある日、
「おめえといても少しもトキめかねえー」
そう言って来夢は僕をふった。
フラれた時、思わず嬉しくて涙が出た。
「なんだ、泣いてんのか、男のくせに」
ラムはルカの頭を撫でながら、
「しょうがねえんだ。周りの連中がおめえと歩いてると、なんだ、あの軟弱やろうっていうからさ」と慰めている。
涙を誤解してる。
嬉しくて泣いてるのに、フラれて落ち込んでると思ってる。
こんな鬼でも少しは気が咎めたりするんだろうか?
「気持ちはあるにはあるんだけどさ、まあ、おめえといると、かっこ悪いだろ」
さっきからずっとけなされているのに、嬉しくて仕方ない。
「だから、フルことにしたから」
と、来夢は実に身勝手な理由を並び立てた。
もし、本当に好きだったら、そんな理屈、納得いかないのだろうが、全面承諾だった。
居酒屋のように、喜んでと叫びたい気分だった。
「そんなに好きだったんだ、罪な女だったんだな」
来夢はニヤとした。
「まあ、諦めろや、おめえといても楽しくないんだ」
そう言って、ルカの両肩を来夢はがっちり押さえた。
「最後にキスしてやる!だからもう忘れろ」
そう言って、来夢はルカのくちびるを奪った。
それは長い長いキスだった。
息が続かなくて、苦しかった。
それでも拘束をとかれた気がした。
「明日から自由だ」そう叫びたかった。
今でもそれがトラウマになっている。
だからもう二度と失敗はしたくない。