タイトル 「天使の羽」 56 | 可愛い君に愛を囁きたい

 しかも命を助けろと言う。


 警察の失態のままで、


 殺人犯に死んでもらっては困るのだ。


 生かして、裁判にかける必要があるのだ。


 小春の悪口は愚痴なのだ。


「お前の殺したみんなの怨霊が乗り移れ」


「この動脈を切り刻んでやりたい」


「注射器で、少しずつ血を抜いて、


 苦しみながら死ねばいいのに」


 小春は悪口を連発する。


 しかし小春の腕は着実に手術を行い、


 死の淵にあった犯人を救い出したのだ。


 これが医者の宿命なのか……。


 私情が口から溢れ出し、抑えられない。


 それがみさきが初めて見た母の手術だった。