アユとタデ | 酒菜・和食 下北沢「金兵」(キンペイ)

アユとタデ

地上に出ると、築地は雨だった。

出がけは小雨だったので油断していました。下北沢から電車に乗って、地下鉄を乗り換えたりしているうちに本降りになったようです。傘は無いのでタオルを頭に巻いて市場の建物に走り込みました。
市場を歩けば発泡スチロールの中で泳いでいるイカに水を掛けられ、生け簀を覗けばタイに水を跳ねられ、どっちにしろ今日は水難の気があるようです。

今日は再び、高知県・仁淀川の天然アユを仕入れる事が出来ました。前回はかなり大型の物でしたが、今回はもう少し手頃な大きさです。
触れると指に瓜のような青い香りが付き、この香りがアユを「香魚」と呼ぶ由縁です。

アユにはタデ酢というのがつき物で、これはタデという野草をすり潰して、トロミを付けた酢に混ぜた物です。
タデには強い辛味があり「タデ食う虫も好きずき」と言われるように、フツウは食べたりしないのですが、アユにだけはコレは必須です。
何故かと聞かれれば、アユは単独でも旨いので答えにくいのですが、アユは脂の強い魚なので辛味でピリッと味覚を引き締めるため、というのがまあ一応の答えと言えば答えでしょうか。
じゃあヤマメやイワナはどうなる、とは聞かないで下さい(笑)

今となっては理屈よりも「アユとタデ」というのは符丁の様な決まりごとで、季節感とも相まって様式美としては「ウナギに奈良漬け」「カレーに福神漬け」以上の「粋」を感じさせる気がします。コレが無いと非常に残念なものです。

こういった組み合わせとしてはハモに梅肉というのもありますが、先ほど、仕入れてきたハモとアナゴを店の水槽に移す際にまたも水を跳ねられました。
外はすっかり晴れた様ですが、ワタクシにはまだまだ水難が付きまとっているみたいです。

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写真はアユとタデの葉っぱ。