優しい夫は母の日は
花を届けていた
育ての親、産みの親、私の母
いつの頃からか
産みの親だけに届けた

それでよかったと思う
実の母との関係
夫の幻想は現実になっだろうか
苦しい厳しい少年時代が
報われただろうか

私も幻想を抱く訳があった
ためか
彼の育ての親も、実の親も
相容れない人だった
プレゼントに心砕く自分が
毎年嫌だった

夫は私の気持ちを尊重し
決して責めなかった
お互い口にしなかった

きらいだった母の日は
卒業した

娘の毎年のプレゼントが
素直に嬉しく
息子からの初めての
プレゼントに感慨深い
寝たきりの夫に報告しよう

夫は何を思うだろうか
お互い踏み入れなかった領域
もう、決して語り合えない
私達の母の日のこと

現実を受け入れ
私は過去を、現実を背負う
母の日に思う