タイトル「森ガールと盛りあガール」 162 | 可愛い君に愛を囁きたい

可愛い君に愛を囁きたい

みぃたんと忍者たなかーず

「分かったよ、どうせ親の跡継ぐに決まってるんだから」

 ルカの家って何やってるんだっけ?

 考えてみたら、聞いたことなかった。

 跡をつぐんだ。そんな仕事なんだ。

 なんで言わないんだろう。

 言うとひくような仕事だろうか。

 農家の嫁は嫌だ。

 旅館の女将も嫌だ。

 町工場の社長……。

 町の電気屋さん?

 うーん、気になる。

「ルカの実家って、何やってるんだっけ?」

 ルカは桃花に耳打ちした。

 なぜ耳打ち。

 恥じるほどの仕事じゃないでしょ。

 へえ……。そうなんだ。

 まあまあじゃない。

 いざとなったら、愛海の絵を売らなきゃと思ったけど、その必要はなさそうね。

 さすが私立大学。

 待てよ、糟糠の妻になってくれないかって言ってたよね。

 あれってまさかプロポーズ?

 なんちゃって、ありえないな。

 思いつきで口にしたのね。

 でもそういう気持ちもなくはないんだ。

 ちょっと嬉しいかも。

 携帯電話の辞書で糟糠の妻をひいてみた。

「いっしょに貧乏や苦労をしてきた妻」

 糟糠の妻か……。

 悪くない響きね。

 なるほどね、貧乏もいいかもね。

 私は大丈夫。

 私には分かるんだ。

 ルカがどんなに貧乏だって、きっと今と同じくらい好きでいられるって。

「弁護士めざしてもいいわよ」

「何だよ、急に」

「だってうちの親弁護士だし、いざとなったら父の事務所で働けばいいじゃない」

「なんだよ、それ。うちの親の仕事をバカにしてる?」

 しまった、そう聴こえなくもない。

「そういう意味じゃないよ」

「上場企業をバカにするなよ」

 えっ、そんなに大きな会社なの。

「さっきから痴話喧嘩?聴こえてるわよ」

 桃花は愛子さんに声をかけられた。

「今日はありがとう」

 愛子が微笑んだ。

「いつまでも仲良くね」

 そう言って、愛子は立ち去った。