恋するリバウンド 11 | 可愛い君に愛を囁きたい

可愛い君に愛を囁きたい

みぃたんと忍者たなかーず

第6章 恋は素敵なダイエット薬


チームは圧倒的強さを見せる。

それもそうだろう、隆平がボールを持てば、


すべてが点につながるのだから。

とにかくボールを投げれば、


あとはボールはゴールに向かって飛んでいくのだ。

ついに迎えた県大会決勝戦。

その日、隼人は永い眠りから覚めた。

「しまった、戻ってきてしまった。試合に出ないと」

隼人は試合に出ようと、


体を起こそうとするが身動きできない。

意識は戻ってもまだ体は治ってないのだ。

これじゃ、うちのチームが負けてしまう。

隼人は夢の中でバスケの試合をしていた。

夢と現実の区別がついてなかった。

しかし現実でも


隼人が幽霊として試合に出ていたのは確かだ。

意識が戻った今、隼人が試合に出ることはできない。

そして決勝戦が始まった。

隆平のシュートは精彩をかいた。

試合は決勝戦始まって以来の大差で幕を閉じた。

129対0で負けた。

ココロは同じような試合を見たことがある。

そう、初めてこのチームの応援をした時だ。

まさにヘッポコチームの再来だ。

どうしたんだろう。

隼人のやつ。

ココロは考える。

今日の試合、


いつもゴール下にいるはずの隼人の幽霊がいない。

なぜ、今日に限って隼人が現れなかったのか。

そしてココロは気がついた。

「隼人が目を覚ましたわ」

「何、このタイミングで隼人の話し?」

ココロが乃亜に訴えても、「またまた」と素っ気ない。

「間違いないって、だって、


今日の試合出てなかったじゃない」

「また言ってる?変なの」

「だっていつも出てたんだよ。幽霊みたいにこっそりと」

乃亜は苦笑い。

と、隼人の両親からメールが入る。

「隼人が目を覚ましたんだって」

「へえ……」

そう言っても乃亜はココロの話を信じない。

「ずっと隼人がチームを支えてたんだよ」

ココロは訴えるように説明した。

「あんた、もしかして隼人のこと好きだったの」

「え?」

その時ココロはハッと気がついた。

そうだ、私はブサイクな隼人を好きになってるかも……。

しかしすぐに気のせいだと打ち消した。

隼人に会うと、いつものブサイクぶりに熱が冷める。

でもやっぱり、なんか気になる。

そして見舞いにいくたび、気になってしょうがない。

会えば、顔を見て、がっかり。

でも会わないと、さみしい。

ココロ自身、自分の気持ちが分からなかった。

これを機にココロはダイエットに成功した。

恋は素敵な媚薬なのだ。

隼人が退院する時には、


ココロの体重は49キロになっていた。
 
「おまえ、また太ったな」

隼人は乃亜に言った。

「また、フラれただろ」

「えっ?」

そうだ、乃亜は県大会のすぐ後、隆平をふった。

隆平の試合の無様な姿を見て、


恋心がさめたのかもしれない。

「お前、失恋するたび、太るからすぐ分かるよ」

それから乃亜はどんどん太り始めた。

でも今度はココロは乃亜に付き合わなかった。

それはココロが恋をしたからだ。

ブサイクで不器用なブ男に恋をしてしまったからだ。

恋をすると痩せる。

ココロは初めて、それを実感した。