その格好のまま、食卓へ行くと、小春がいた。
小春は鈴音を見て、
「まあ、素敵。そんな格好するのね」と笑った。
「似合うわ」
小春は食事中、誉め続けた。
「スケートの衣装も、
そんな可愛らしい服の方が私は好きだわ」
ひなたは母が人を誉めるのが珍しくて、
一人笑っていた。
「スケートの服はコーチのお下がりだから」
「コーチのお下がりって、それはすごいビンテージね。
コーチって東京オリンピック出てたんじゃないの」
「オリンピックには出てないみたいです」
「そう、じゃあ、私が見たのは
スキーのジャンプだったのかしら」
「きっと、それ、長野か、札幌オリンピック。
それに男子だし」
ボケてるのか、知ったかぶりなのか、
ひなたにも分からなかった。