愛ちゃんが「子供に会いたければ、司法試験合格してみなさいよ」と言ったのが、全ての始まりだった。
元々エリート高出身でエスカレーター式で大学まで上がってきてるくらいだから、頭はいいと思ってた。
でもまさかあのチャラ男が、本当の弁護士先生になるとは……。
私は嫌だわ。
あんな弁護士。
痛車で、それこそアニメソングでもバリバリ鳴らしながら、法廷にやってくるんでしょ。
まずそこからマイナスじゃん。
ありえないよ。
勝てる裁判でも負けちゃうよ。
陪審員の印象が悪いでしょ。
「フラフラしてるあんたに子供は預けられないわと、飛び出したもんだから、さすがに山ちゃんも目覚めたんだろうね」
月に一度子供に会わせる代わりに近況報告をさせていたらしい。
まあ弁護士になれば過去の前科を打ち消せるかもしれない。
それこそ少年犯罪専門の弁護士になったらいい。
そんな資格を持たせたかったんだ、あのおばさん。
やるね、ほんとに更正させてるじゃないの。
「でも司法試験って、そんなに簡単に受かるもんじゃないよね」
うちの大学出身者の中にだって、卒業して、三十歳くらいで受かる人がざらだ。
まあ、現役って言っても二十六だけど……。
それでも奇跡に近い。
私はそもそも司法試験自体が頭にない。
父親の下で働くなんて、絶対に嫌だ。